lib14's TRPG library

TRPGに関するメモや随想など

オクトパストラベラーTRPG

 先月Switchのゲームと同時期に発売された『オクトパストラベラー公式コンプリートガイド&設定資料集』にTRPGのリプレイが収録されています。こちらはリプレイのみで、ルールは収録されていないということでしたが、キャラクターシートなどは載せられていて、判定まわりなどは『ガーデンオーダー*1とほぼ同じであることが読み取れました。ここでは、『ガーデンオーダー』との違いに注目して中身をみてみたいと思います。
 『ガーデンオーダー』(以降、GO)はHPでダメージを管理するのではなく、[負傷]というルールを使用します。そこが大きく異なるので、HP(あるいはSP)とダメージに関するルールやデータが大きく異なります。またGOでは[特性能力]を1つ選択すると、特性能力に応じた7つ(8つ)の[効果]を自動的に取得できましたが、「オクトパストラベラーTRPG」(以降、OT)では、[ジョブ]を選択した後、複数種類のアビリティから更に選択する方式になっているようです。Switch版と同じく、ベースジョブとバトルジョブが設定されている(バトルジョブは初期作成時には選択できないらしい)ことからも窺い知れます。OTはアビリティやアイテムなどの重要度が高く、扱うデータはGOと比べて多くなることが予想されます。
※注)下記分析はあくまで推測です。情報が足りない部分はGOなどを参考にして想像で補っている箇所もあります。

相違点

  • 行動値……[(身体+感覚)÷2]ではなく[(身体+知力)÷2]になっている。
  • 初期常備化ポイント……【魅力】ではない。(【魅力】+10など)*2
  • HPは【身体】、SPは【意志】をベースに各+15して後、5点を割り振る方式。
  • OTには(今のところ)ライフパスがない。よってライフパスによる技能の修正も入らない。

文字起こし

文字に起こしたバージョンはこちらです。
http://7thload.web.fc2.com/OT.pdf

その他

 ここでいう「オクトパストラベラーTRPG」は、あくまで『コンプリートガイド』収録版のリプレイから読み取ったルールのことです。公式サイドから本格的にルールが発表された場合、内容の変更される場合もありますし、私の分析が甘いだけかも知れません。

*1:同じくF.E.A.R.が出している『エースキラージーン』もほぼ同様のシステムである。

*2:OTでは防具が「盾」「頭」「体」など複数種類あって、1種類しかないGOと比べても、沢山の種類の装備品を用意せねばならず、常備化ポイントが不足する。

体験型と創作型

 TRPGの楽しさにはゲーム性(勝ちを目指す過程を楽しむ競技性)や、社交性(皆が集まってわいわいやる)なんかがありますが、その一つに「物語性」なるものがあります。「ロールプレイ重視」だとか「ストーリー重視」だとか、色々な表現があるわけですが、このエントリーでは物語性について深掘りしていきたいと思います。

物語性のフレームワーク

 物語を楽しむ態度には大きく分けて2つの類型のフレームワークがあると思っています。1つは受け手として物語を楽しむ「体験型」と、もう1つは作り手として物語を楽しむ「創作型」です。TRPGでは物語を聞く側に回る場合も、語る側に回る場合もあるので、勿論どちらもやっている事なのですが、参加者間でフレームワークがズレると卓がうまくいきません。
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 野良卓*1GMをやることを想定した場合を想像してみてください。自分が回したいシナリオがどっちのフレームワークで遊んだ方が楽しいかをよく考え、それとは逆のマスタリングをしなければ物語性を損なわずにマスタリングできるはずです。
 かいつまんで説明すると、PLが知っていることと、PCが知っていることに差があるようなシステムと差がないようなシステムでは、GMのとるべき態度が変わります。現代物で一般人をやるなら、GMは情報を開示せず、PCの行動に口だしすべきでないし、ヒロイックな「その世界の特別な人間」になりきって遊ぶなら、GMは情報を明らかにして、PCの行動を積極的に誘導すべきです。

ロールプレイの違い

 PL―PC間情報格差の小さい環境では、PLの立ち位置とPCの立ち位置は近しいものになります。現代物で一般人をやる場合をイメージすると分かりやすいです。PCは勇敢さや善悪に対する価値観や、職業意識、差別感情、信じているものなどについて、私たちとほとんど変わらない感覚を持っています。ゆえにキャラクターの内面を維持しやすく、直感的なロールプレイができるのです。
 一方でPL―PC間情報格差の大きい環境では、その世界では特殊な立ち位置のキャラクターになります。神話の世界で英雄をやるイメージです。PCの価値観や信念はひどくデフォルメされたものになっていて、私たちの感覚とはかけ離れています。キャラクターを演じる際は、映画やアニメの主人公たちのように、現実離れした理想的なキャラクターをお手本にします。

価値観と世界表現

 TRPGで描く物語はつまらない現実とはかけ離れたロマンある物語であるべきです。これはTRPGに限らず、エンタテインメントに共通する価値観です*2。現代物で一般人のロールプレイをする場合、感覚は現実の延長線上にあるわけなので、その意味で現実と何ら変わらないのです。しかし、普通の人が非現実的な体験をするというのは面白いことです。体験型というのは、遊園地のアトラクションを楽しむかのように、空想の世界に没入して、特別な体験を味わうことが物語としての価値なのです。世界表現はGMが担当し、GMがPLを世界に引き込む役割を担います。
 神話世界の英雄になりきることで、「悪がはびこる世界」のような、悪い状態の世界をぶっ壊して、世界を自分(達)色に作り替えるロマンがあります。このカタルシスが創作型の価値でもあります。ヒロイックな世界観は「悪は悪らしく」「ヒロインは善良で感情移入できる」存在であるべきです。何のためらいもなく、気持ちよくかっこいいロールプレイができるような世界観こそ魅力的な冒険の舞台で、困難な挑戦の先に待つ望ましいエンディングに心が引っ張られるのです。

フレームワーク

 プレイング(マスタリング)はそれぞれの価値観が目指すものを実現するために調整すべきです。そのためにGM―PL双方が共有しておくべき考え方が「体験型」「創作型」のフレームワークです。クトゥルフ神話TRPGは体験型、F.E.A.R.系のゲームや冒企系のゲームは創作型であることが多いと思います。D&Dは版によって、レベル帯によって変わります。2つのフレームワークは原則的に相容れないものですが、キャンペーンで遊ぶ場合は例外も起きます(後述)。もしかしたら、シナリオによっては両方のフレームワークを場面に応じて切り替えることが求められるかも知れません*3
 以下に示すフレームワークに関する記述は、僕がそのタイプのシステム(シナリオ)で遊ぶ時に気にしている事や、大事にしている事を言語化したものです。あらゆる場面で次のような考え方が当てはまるわけではないと思いますが、類型のイメージを把握するのには役に立つはずです。

フレームワークのイメージ:体験型

 PL―PC間の情報格差が少ないシステム(シナリオ)の場合は、PLの感覚とPCの感覚は近いので、物語に段々とPLを引き込みたい時や、あっと驚くギミックを見せたい時に有効です*4。しかし逆に、PCに対して何かかっこいいロールプレイをして盛り上げてもらいたいような場合は不向きなフレームワークになります。PCを特別な立ち位置のキャラクターにしたいというPLの要望も却下する必要があるかも知れません。PCは自分自身が学校や会社や休日の街やTVのバラエティ番組などで見たことのある人物、つまり人格やファッションや生活態度が容易に想像がつく人をモデルにするべきです。
 体験型のフレームワークでは、「想像できないこと」は敵です。GMの描写やPLのロールプレイを聞いて、その場面が、自分に十分な画力があると仮定して「イラストにできるかどうか」よく考えるべきです。イラストにできないシーンはたぶん、不適切なシーンです。GMは拙くていいので、位置関係が分かるような地図を描くべきです。あと、できれば、NPCの顔のイラストを調達しておきたいところです。BGMやSEは雰囲気を盛り上げますが、上手に使わないと間抜けになるだけなので、注意が必要です。それから、描写部分であまり難しい言い回しをしないようにして下さい。PLにイメージが伝わらない事がゲームの面白さを損なわせます(ボイセとテキセで表現を変えた方がいい事があります)。また想像力を刺激するのは良い方法ですが、まるでコンピュータゲームのように音や映像などを駆使して「リッチ」な描写にすればよいというものでもありません。これはPLを受動的にしてしまい、物語を求めようとする意欲を奪いかねない手法です。特に体験型の描写においては、適度な分かりにくさもエッセンスになるのです。
 GMはPCの五感の代弁者であって、PCの立ち位置についてGMは判断材料を与えるにとどめるべきです。「PCはPL」「NPCと背景世界はGM」という役割分担は互いに侵してはならないものです。なのでキャラメイクや攻略への筋道について、あまりとやかく言うべきでなく、ゲームの結果に対する責任をPLに感じさせるためにも、常識的に考えて可能であると判断できるあらゆる挑戦を認めるべきです。明らかにPLが状況を誤認している場合等を除き、GMは余計な口出しをしてはならないのです。しかし、暇だからといって、ぼうっとするのではなく、PLの発言や表情には注意を払い、今何を考え、どんなイメージを膨らませているのか、PLの感受性に関心を向ける必要があります。PLがシナリオの難しさを楽しんでいるのか、それともやる気をなくしているのか、気付くことが重要です。GMは楽しんでいるPLに対して何もしないのが仕事です。

フレームワークのイメージ:創作型

 PLが知っていることと、PCが知っていることに差があるようなシステム(中二っぽいやつはだいたいコレです)では、どんなシナリオ展開になるのかをPLに対してぶっちゃけておいて、役者であるPLに指示する演出監督のような感じでPLと共に物語を創造する共犯者でいるべきです。GMはPCに何をして欲しいのかを伝え、PLには表現の余地を残しておくわけです。よって、段々と物語に引き込んでいって、謎を解き明かしていくタイプのシナリオにすべきではありません。裏切り者のNPCを出す場合は、あからさまに「こいつ裏切りそう」と分かるように描写しなければならず、PLに対しては「まだ裏切り者だと分かったわけではないので、騙されて下さい」としっかり説明すべきなのです。
 創作型のフレームワークでは、「見通しが立たないこと」は敵です。GMハンドアウトやトレーラー、マスターシーンなど(たとえシステムにそういうルールがないとしても)を利用して、PLに情報を伝えるべきです。もしPLがPL情報とPC情報を混同しているようなら「その情報はPCは知らないですよ」と言っておけばいいのです。PLに対しては2つの立場をはっきりと切り分けるように促すことが重要です。情報の出し惜しみをしてはならず、秘密の情報がある場合は「これは秘密の情報なのでPCは知りませんが、PLの皆さんにはこっそり教えます」と言います。PLとPCは別人であるということを殊更に強調するのが創作型のフレームワークです。
 創作型の主たる価値は追体験にあります。映画やアニメで見た「あの」英雄になりきって、かっこいいセリフを言ったり、必殺技を叫んだりする楽しみです。あるいは一次創作ということで「僕の考えたキャラクター」が活躍するストーリーを夢想するわけです。そのキャラクターを表現する自由をPLには与えるべきで、少しばかり公式の世界観に合わないからと言って無闇に却下すべきではなく、PLの意思を尊重すべきなのです。英雄はそのゲームの世界観をぶち壊す存在なので、ある種の非常識さを認めるべきです。その代わり「館に火を付けてゴブリンを一掃したい」という常識的に可能だと思われるPLの提案に対して「英雄はそんな事をしない」という理由で却下できるのです*5。常識が通用しないので、GMはPLに対して「彼はどんな英雄ですか?」と質問することは重要です。何かロールプレイをするごとに「それはどういう意味?」とか「元ネタ何かある?」とか、気軽に質問しあえる雰囲気にしなければなりません。PLもメタ発言を忌避せず、「僕のPCは~~という設定があるので××と言います」みたいな感じでPL発言で解説を入れながらプレイしたいものです。PL-PC間の情報格差が大きいということは、PCの考えていることは他の参加者と共有できていないということですから、説明は不可欠です。気心の知れた仲間内でさえ、説明抜きでは分かり合えません。

キャンペーンの終盤

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 キャンペーンの終盤では、体験型と創作型のいいとこ取りみたいな、素晴らしい状態になります。数々のセッションを積み重ねているので、「ハイコンテクストでも通じ合える」という奇跡の状態が発生し、PCの価値観や態度などは、もはやPLにとって馴染み深いものとなっており、第二の自分と言っても過言ではないぐらいにキャラクターに入っていける状態になっています。物語の背景世界における問題が何であるかを認識しており、他のPCやNPCとの関係性が出来上がっていて、自分が物語世界の中で何をなすべきかを自覚しています。
 感情移入、非日常の体験、カタルシス、他者との関わり……TRPGの価値とされるものの、殆どがキャンペーンの終盤で手に入れることができます。もはやこの段階に達することができれば、「体験型」だとか「創作型」だとかいちいち気にする必要はなくなります。いつものメンツといつものセッションをするだけです。それまでの過程でフレームワークを共有しておくことが、キャンペーン継続の鍵になるのです。

*1:ゲームサークル内のセッションや、見知った仲間どうしの卓ではない、フリーのコンベンションやオンセにおける不特定多数を対象とした卓。

*2:少し文学的・芸術的な試みをしようと思っている人は、「日常の中にあるちょっと素敵なもの」を表現しても面白いんじゃないかと思うかも知れません。エンタテインメントの王道だとは思いませんが、「退屈な日常」や「ストレスの多い現実」よりはロマンがあります。

*3:シノビガミ』の秀逸なところは、【秘密】という体験型に通じる要素を「誰が何個不確定情報をもっていて、手番を消費して判定に成功すれば1つ確定できる」という明確なシステムに落とし込んでいることです。こうすることで、基本は創作型のフレームワークですが、秘密部分に関しては体験型のフレームワークから創作型のフレームワークへ脳を切り替えることを容易にさせています。

*4:もちろん、簡単にギミックに気付かれてしまうこともあるわけですが、それはGMの描写をPLがきちんと聞いてくれていたということですから、悪いことではありません。PLを賞賛した後、創作型のフレームワークに移行すればよいだけです。その切替に失敗するとPLのGMに対する評価が下がることがあります。

*5:通常はトレーラーやハンドアウトに「キミは館へ突入した」などと書いておくことで、館に火を付けるような選択肢を排除します。

ヒロインモチベ問題と感情

 ヒロインモチベ-ション問題というのがあったので、少し思ったことを……。

感情移入できないヒロイン

 だいぶ昔に、「洞窟に住む魔獣を倒せ」みたいなシナリオがあって、そのシナリオのギミックとして「実は魔獣は猫の親子」という情報トリックがありました。GMの狙いは「可愛そうと思ったPCたちが依頼人と対決する」というドラマチックな物語を描くことだったのですが、僕は個人的に猫が嫌いで、全く感情移入できなかったわです。「いや、冒険者なんだから依頼を達成すべきでしょう?」って思ったにもかかわらず、他のプレイヤーたちは猫を助けるムードでした。
 オタクって猫好きな人多いですよね(経験則)。猫がペットとして飼われていることは、知識として知っています。しかし僕は幼少の頃、猫に追いかけられ、爪で引っかかれて以来、奴らは人間の世界にいてはいけない野獣だと思っています。個人的には恐怖の対象でしかないのですが、「もふもふしたい」みたいな恐ろしい事を笑顔で口走っている人を何人も横目で見ている内に、世間的には「猫は愛されている」という真実を了解しました。
 プレイヤーの感情移入度を高めるという点で、【引き】によるミッションの提示は優れていますが、一方でプレイヤーの感情を読み違えると事故りやすいというデメリットを抱えています。肝心なのは事故が起きたとき、いかに軌道修正できるかだと思います。
【◎】A:PLが感情移入できて、ドラマチックになる
【○】B:摺り合わせをして、そこそこ感情移入ができる
【△】C:ドラマ性を無視してゲーム処理のみに専念する
【△】D:少数派が感情を押し殺して空気を読む
【△】E:サークルの偉い人が専横的に場を仕切る
【×】F:セッションが崩壊する
 最も望ましいのはAのパターンですが、中々理想通りにいかず、C,D,Eのパターンに行き着くことがしばしばあります。△のパターンは、一時しのぎ的には許容範囲ですが、参加者の不満は蓄積されます。◎を目指して△(場合によっては×)になるぐらいなら、初めから○を目指すべきだという立場が、ハンドアウト制に積極的な立場です。

ハンドアウト制の話

 ハンドアウト制はコンベンションや野良セッションにおいては、合理的なミッション提示手法ですが、ハンドアウトが、あたかも固定されたルールであるかのようにまかり通ることで、プレイヤーの感情は置き去りにされかねません。例えば、気に入らないハンドアウトしか選択肢にない場合や、GMが描写したヒロインが、ハンドアウトに書いてあったヒロイン(期待していたヒロイン)とかけ離れている場合、プレイヤーはどうすることもできず、不満が蓄積されるのです。初対面のGMに対して「もっとマシなハンドアウトはないんですか」とは言えないでしょう。
 提示されたヒロインに対して消極的な態度をとっていると、他のプレイヤーから「ほら、ハンドアウトに書いてあるでしょう?」と窘められることの切なさといったら……。誰も私の感情を慮ってくれない、という感情を胸に秘めたままセッションを終えることになります。そこで「自分一人が感情を押し殺せば、皆は笑顔でいてくれる」という真理にたどり着き、TRPGが嫌いになるわけです。
 さて、「PLの感情とPCの感情は別物であるのだから、PLが傷つく必要はない」という想定される意見についても注釈しておく必要があると思います。僕の意見は「一部は正しいが、一部は間違っている」です。確かにPLの感情とPCの感情は別物ですが、PLはPCに感情移入することができます。特に感情移入することによって物語としての価値を発揮するタイプのシナリオでは、両者を切り離すことは全く愚かな考えだと思います。楽しむことが目的でプレイしているのに、気分が乗らないロールプレイなんて誰もしたくないはずです。
 話を戻して、ハンドアウトは「固定化されたルール」にしてはならないと僕は主張します。「ハンドアウトに書いてあることには従わなければならない」という慣習は概ね正しいです。しかし「ハンドアウトに書いてあることには従わなければならない」という前提は間違っています。それはPLの感情を置き去りにする危険を孕んでいることは先ほど指摘した通りです。でも「ハンドアウトには価値がない」というのも大間違いです。何故なら、ハンドアウトこそがGMの感情を表すものだからです。GMがそのセッションに対して何を思い、PLたちに何を期待し、どんな面白いミッションを提示しようとしているかを表現したものだからです。GMがPLの心を無視するとまずいように、PLもGMの心と向き合うことでより良いセッションに近づくと思っています。
 もっと突き詰めた話をすれば、互いに、互いの心と向き合う姿勢(と少しのコミュニケーション能力)があればハンドアウトは必要ないのです。とは言え、「猫が可愛い」なんてこれっぽっちも想定できなかった、あの頃の僕にはハンドアウトは必要でしたが。
 いずれにせよ、表現力と感受性を磨くことで、より良いセッションに出会える(気づける)という感覚は年々、強くなってきています。システムにだけ依存するのはよくないですが、システムを上手く活用することで自分の少ないコミュニケーション能力を引き伸ばすことはできるはずです。今は猫がヒロインでも大丈夫です(笑)

アリアンロッド2E』サプリまとめ ―パーフェクトスキルガイドの価値について―

 アリアンロッド2E『パーフェクトスキルガイド』のお話。
 今回は、新サプリも含めて、新しくアリアンロッド2Eを始めた人向けに、サプリの情報をまとめたいと思います。

 手っ取り早く、結論から言うと、『R1』『R2』を買ったら『パーフェクトスキルガイド』を買うのがおすすめです。次点で『パーフェクトアイテムガイド』です*1
 オンラインセッションで、どどんとふ等のマップツールを使って遊ぶ場合は、スクウェアルールの載っている『エクスパンションブック』が必要になるかもしれません(ただ、ルール自体は難しくないので、卓によってはGMが「持っていなくても説明するからいいよ」と言ってくれることも多いと思います)。プレイヤーとして遊ぶ場合に必要になるのはこれぐらいです。
 GMは『エクスパンションブック』と『エネミーガイド』*2が欲しくなります(なくても一応できる)。

購入優先度

  1. 基本ルール1・2*3
  2. パーフェクトスキルガイド*4
  3. パーフェクトアイテムガイド*5
  4. エクスパンションブック*6
  5. ストレンジャーガイド*7

 この6冊*8があれば2018年2月現在の『AR2E』のプレイ環境は完全に揃いますが『EXB』『STG』はオマケと考えてよいと思います。*9

今までのサプリは使えない!?

 既に諸事情を知っている方は読み飛ばしてくださって結構ですが、基本的な事を説明します。
 『アリアンロッド2E』ではゲームバランスの調整等により、同じ名前のスキルが、後発のサプリメントで別の効果になって再登場することがあります。そうすると、先発のサプリメントに書かれていたスキルの効果と矛盾してしまい、混乱してしまいます。
 例えば《ファランクスクラッシュ》というスキルを例にとってみると、『アルディオン・レボリューションガイド』『スキルガイド2』『パーフェクトスキルガイド』では以下のように変遷しています。

ARG コスト:6/SL上限:3/取得には《ファランクススタイル》が必要。ダメージ増加を行なう。そのメインプロセスで行なう攻撃のダメージに+[《ファランクススタイル》で選択した能力値]する。1シーンにSL回使用可能。
SG2 コスト:6/SL上限:1/《ファランクススタイル》1で取得可能。装備している「装備部位:頭部、胴部、全身」の防具の「重量」が合計で15以上の時に有効。ダメージ増加を行なう。攻撃のダメージに+[《ファランクススタイル》で選択した能力基本値*10]する。この効果はメインプロセス終了まで持続する。
PSG コスト:3/SL上限:1/《ファランクススタイル》1で取得可能。装備している「装備部位:頭部、胴部、全身」の防具の「重量」が合計で15以上の時に有効。ダメージ増加を行なう。攻撃のダメージに+[《ファランクススタイル》で選択した能力値]する。この効果はメインプロセス終了まで持続する。

 
 ……これでは困りますね。そこで、普通は最新版のサプリメントに書かれている記述をPLとGMとの共通認識ルールにするわけですが、こうなると、先発のサプリメントの記述は「無効」となり、ゲームをする上で全く役に立たないものになります*11。そういうわけで、古いサプリは買う必要のないサプリなのです。


アリアンロッド2Eの歩み(概説)

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 さて、ここからは詳しく知りたい人向けのまとめになります。『アリアンロッド2E』の歴史をまとめると、次のような3つの時代区分に分けられるでしょう。

  • [2.0版]世界の地理的な広がりの時代(地域系サプリの時代)
  • [2.1版]世界観の拡張の時代(まとめ系サプリの時代)
  • [2.2版]これからの時代(パーフェクトの時代)

 また、アリアンロッド2Eのサプリに掲載されている追加情報は大きく分けて5つあります*12

  • 追加スキル(新クラス、新種族を含む)
  • 追加アイテム
  • 選択ルール(選択ルールに付随するデータを含む)
  • エネミーなどのGM向けの追加データ
  • 世界設定などキャラ設定やシナリオ作りに役立つ情報

 地域系サプリの時代は、これら全ての要素を満遍なく拡張するサプリでした*13。一通り拡張が終わると(2.0版→2.1版の過渡期)各要素についてまとめ系サプリが出版されるという流れがありました*14。今回のパーフェクト・シリーズもこの流れを受け継いでいます*15

その1:上級ルールブックという遺物(2.0版)

 2Eが発売された直後は、これら(スキル、アイテム、追加ルール、GM向け情報、世界設定)全ての要素を網羅した『上級ルールブック』が発売されました。『R1』『R2』の次は『上級』を買うのが定番で、これら3冊さえあれば割と長期的に遊べるため、値段も手頃な『上級』は重宝していました。
 しかし、『アイテムガイド』『スキルガイド』によって主要なデータが更新されると『上級』のデータは古くて使い物にならない代物になってしまいました。スクウェアルール等の重要な選択ルールも掲載されていますが、『改訂版基本ルールブック』や『エクスパンションブック』の登場によって、完全に過去の遺物になってしまいました*16
 初めて『AR2E』に触れる方は『上級ルールブック』という言葉に騙されないようにして下さい。自宅の本棚を博物館にしたいという奇特な方のためのアイテムです*17

その2:地域系サプリの時代(2.0版)

 2Eが発売されてからの展開は1E(旧版)のデータ量に追いつくことを目指したものでした。『アリアンロッドRPG』の基本の舞台であるエリンディル西方以外の地域を紹介するサプリが幾つか出版されることになります。

 この3つのサプリを「地域系サプリ」と呼ぶことにします。今となっては世界設定部分にしか価値がありませんが、これらのサプリによって『AR2E』は世界は広がりました。
 世界の広がりを語る上では『超上級ルールブック』*21は外せません。CL20以降の運命クラスの追加と、異世界の存在を明言した初めてのサプリです。これが改訂版で追加されるアーシアン、ひいては『ストレンジャーガイド』への布石になっています。

その3:まとめ系サプリの時代(2.1版)

 3つの「地域系サプリ」と、『超上級』に散らばっているデータをまとめて参照しやすくしたのが「まとめ系サプリ」です。

  • 『アイテムガイド』*22
  • 『スキルガイド』*23
  • 『スキルガイド2』*24
  • 『アイテムガイド2』*25

 「まとめ系サプリ」の特徴は今までのデータのバランスの悪い点を修正して再録している点です。つまり、より良いプレイ体験ができるということです。プレイヤーにとっては「まとめ系サプリ」を適用しない手はありません。そういうわけで、基本ルールブックのデータや、『上級』、『超上級』、地域系サプリのデータは役に立たないものに成り果てたのです。事実上、『アリアンロッド』の2.1版が誕生したというわけです。

その4:改訂版の登場と来訪者/妖魔種族(2.1版から2.2版へ)

 ここで、満を持して基本ルールの改訂版が登場します。「まとめ系サプリ」でアップデートされた最新のデータを再録した「基本ルールブック」です。重要な選択ルールが今まで載っていた『上級』の価値もなくなったため、それに代わる『エクスパンションブック』*26も発売されました。
 改訂版の目玉は、異世界(地球)出身のPCを表す種族「アーシアン」の追加です。後発の『ストレンジャーガイド』では「異世界トリップもの」を拡張するデータや解説記事が掲載されています。また『ストレンジャーガイド』及び『エクスパンションブック』では「妖魔種族」をPCとしてプレイできるデータも追加されました。

展開史まとめ

 旧版では様々な地域を紹介することで世界が地理的に広がりました。
 2Eでは旧版環境の再構築を行い、『超上級』によって世界の全体像が提示されました。
 改訂版以降の展開は、「異世界トリップもの」と「妖魔種族」の登場によって世界観が拡張されました*27
 つまり、改訂版を境に「世界の地理的な広がりの時代」が終わり、「世界観の拡張の時代」が始まったというわけです。

パーフェクトスキルガイドの価値

 まず『パーフェクトスキルガイド』は従来の『スキルガイド』『スキルガイド2』*28からデータの記述が変更され、事実上の2.2版がスタートしたと考えてよさそうです。ただし『エクスパンションブック』と重版が決定した『ストレンジャーガイド』の2冊とは互換性が保たれるようにしているようです。
 つまり『パーフェクトスキルガイド』は改訂版以前の「世界の地理的な広がりの時代」の財産を一冊にまとめたものです(『ストレンジャーガイド』と『エクスパンションブック』のデータは再録されません)。もちろん値段は決して安くはないですが『アリアンロッドRPG』10年の歩みが全て手に入れられることを考えれば、投資する価値は十分にあります。今後の展開がどうなっていくかは不明ですが、パーフェクト・シリーズは、それ以前に展開されてきた拡張データを凝縮したものになっています。

卓環境についての補足

レギュレーション 備考
2.0版 『旧R1』『旧R2』『上級』+地域系サプリや『超上級』 『ITG*29』アリの場合もある
2.1版 『R1』『R2』(どちらでも)+まとめ系サプリ 『STG*30』アリの場合もある。『上級』か『EXB』があるとよい。
2.2版 『改R1』『改R2』『EXB*31』+パーフェクト 『STG』アリの場合もある。『EXB』はなくてもいい場合もある。

 もしあなたが、昔から遊んでいるサークルにお邪魔してプレイする場合、古い時代のレギュレーションで遊び続けている場合があります。その場合は、昔のサプリを手に入れる必要があるかも知れませんが、基本的に『上級』、『超上級』、地域系サプリ、まとめ系サプリは買う必要のないサプリだと思っておいて間違いありません。
 例外としてGMをする人はエネミーデータを参照するために『エネミーガイド』が欲しくなります(なくても一応できる)。ただし『ENG』には地域共通のエネミーと西方地域のエネミーしか載っていないので、アルディオン大陸のエネミーを参照するには『サガ・クロニクル』*32、東方・アースラン・マジェラニカのエネミーを参照するには『ディスカバリーガイド』*33を使います。


追記:パーフェクトアイテムガイドについて

 『PIG』には追加クラス「ブラックスミス」を含め、旧『アイテムガイド』『アイテムガイド2』のデータが再録されていますが、『STG』『EXB』で追加された新種族対応の装備品など、新規データも収録されています。『PSG』同様、リプレイ本の『エスピオナージ』や『GF別冊vol.25 たとえばこんなアリアンロッド』に収録されたデータも再録されていますが、『超上級』『GF別冊vol.30 ガイドブックガイド』収録のローカルデータ、『アリアンロッド・サガ ファンブック Kind of Magic』収録のゴーレムなどは再録されていません*34

*1:既に発売されたので2018/02/21訂正

*2:『パーフェクトエネミーガイド』も12月の「ふぃあ通」内では示唆されていましたが、企画として正式に動いているわけではなさそうです。『パーフェクトアイテムガイド』ではネームドエネミーガが「『改訂版』対応のデータについては、今後、なんらかの形で発表する予定である」と書かれています。

*3:『ルールブック2』には残りのサポートクラスと、追加種族スキルやCL5~10の装備・アイテムが載っているほか、非ダンジョン系シナリオの進行ルールも掲載されています。

*4:一般スキル及び各クラスの追加スキルと、追加クラス及び地域クラス、CL10以降の上級クラス、称号クラス、運命クラス、そしてギルドサポートが載っています。『AR2E』はスキルを組み合わせてキャラを作るのが楽しいゲームだと思います。キャラメイクの幅がグググッっと広がる『PSG』は『基本』に慣れてきた人にお勧めです。

*5:『基本』だとCL10までのアイテムしかサポートされていません。高レベル環境で遊ぶには『PIG』は必須です。またアイテムやマジックアイテムによって細かい調整がきくので、『PSG』環境のみでは諦めるしかなかったロマン重視のキャラビルドが一部現実的なものになります。

*6:『PSG』に再掲されていない3種の妖魔種族データと、[誓約]データが使用できます。[誓約]は10点以上の成長点を使うことで取得できる一般スキルの上位版のようなデータで、能力UPと同時にPCが護らなければならない「束縛」が課せられます。他にエリンディル西方の簡単な解説と、スクウェアルール、トラップデータの再録版が載っています。シナリオ2本付き。

*7:『PSG』に掲載されていないアーシアンの追加スキルと、3種の妖魔種族データ、3種の基本クラス、各クラスのアーシアン専用スキル、追加現代アイテムが掲載されています。他、コロシアム形式のセッション進行ルール、異世界トリップものを扱うためのガイドラインやワールド設定、2本のシナリオと5本のシナリオフックが掲載されています。

*8:エネミーについては『エネミーガイド』『ディスカバリーガイド』『アイテムガイド2』にデータが散逸している状態です。『基本』掲載のエネミーは『エネミーガイド』の抜粋です。

*9:公式の追加データとして『超上級ルールブック』掲載の「エルクレスト学園」「ネオ・ダイナストカバル」のローカルデータ、『ガイドブックガイド』(GF別冊Vol.30)掲載の「シェルドニアン学園」のローカルデータ、『ファンブック・カインド・オブ・マジック』(エンターブレイン刊)掲載のアルディオン大陸(東方)の追加アイテムデータ、「スーパーシナリオサポート」シリーズvol.1~3掲載のアーシアン向け追加アイテムは再掲されていないようです。

*10:元々の記述は「能力値」でしたが、エラッタで「能力基本値」に変更されました。この変更は強すぎですね(笑)

*11:折角買ったサプリメントですが、より良いゲームをプレイするためには仕方のないことです。

*12:シナリオが掲載されているサプリもあります。

*13:世界が広がることへのワクワク感がありました。データだけ提示されても淡泊なのは確かで、このワクワク感を追体験する覚悟があるのでしたら、地域系サプリに手を出してみるのも手です。ただし勿論、データは使い物になりません。

*14:様々なサプリに散在しているデータを、あちこちのサプリをひっくり返して参照するのは大変でしたが、まとめ系サプリの登場で、プレイアビリティが向上しました。

*15:パーフェクト・シリーズで、もっとスッキリしますね。

*16:エネミーに関しても『エネミーガイド』が出ているし、トラップは『エクスパンションブック』でカバーされています。

*17:Amazonで『上級』の価格を調べたら3671円でした。定価より高いです。トラップや選択ルール目当てなら4104円と、少し高いですが制約や追加種族も載っている『エクスパンションブック』の方がおすすめです。

*18:同時にランダムダンジョンルールとレジェンドデータが追加されています。ランダムダンジョンルールは改訂版がWebで公開されており、レジェンドデータは『エクスパンションブック』収録の制約ルールの中にまとめられています。また『西方ガイド』で紹介された地域情報は抜粋された形で『エクスパンションブック』にも載っています。

*19:同時に大規模戦闘ルールが追加されました。大規模戦闘ルールは、戦乱の地アルディオンを念頭に置いたルールになっていて、他のサプリには再録されていません。今までは称号クラス「ジェネラル」のスキルの一部には大規模戦闘ルールを前提としたスキルがありましたが、『パーフェクトスキルガイド』で効果が変更され、必要度がぐっと低下しました。

*20:旧版『東方ガイド』に加えて、新たにマジェラニカ、アースランに関する追加地域クラスと、新しい種族のサハギン、フェイが追加されました。これらは『パーフェクトスキルガイド』で追加されています。

*21:CL20を超えたPCたちは神に近い存在となり、幽界((幽界については『改訂版ルールブック②)p.191参照。)に存在する防塞都市を舞台に冒険することができるようになりました。またGM向けに高レベルセッション用のレギュレーションの決め方(お金やアイテムの制限)についても言及されています。

*22:基本、『上級』、『西方』『アルディオン』『超上級』がまとめられていて、追加要素もあります。『ディスカバリー』よりも前に発売されています。

*23:基本、『上級』、『超上級』の一部がまとめられていて、追加要素もあります。『ディスカバリー』で追加された新種族も再録されています。

*24:地域系サプリで追加された地域クラスと、『超上級』の運命クラスがまとめられていて、追加要素もあります。

*25:ディスカバリー』で追加されたアイテムと、アイテム関連の選択ルール、新クラス「ブラックスミス」が追加されたサプリです。まとめ系サプリとしては異色で、追加要素の方がメインになっています。

*26:旧『ルールブック②』掲載の「ゲッシュ」ルールや、『西方ガイド』『ベルリールの鉄巨人(シナリオ集)』収録の「レジェンドデータ」が「制約」ルールに統合されて収録されていますが、スキルやアイテムの抜粋的なものはありません。

*27:異世界トリップもの」と「妖魔種族」は「まとめ」が出るほどのデータ量がないのです。

*28:アリアンロッド2E エスピオナージ』『アリアンロッド2E リプレイ・フォーリナーズ』に収録されたスキル関連のおまけデータも『パーフェクトスキルガイド』には再録されています。

*29:アイテムガイド

*30:ストレンジャーガイド

*31:エクスパンションブック

*32:『アルディオン・レボリューションガイド』に掲載されたエネミーを『エネミーガイド』と同じ基準でバランス調整した2.1版のアルディオン大陸系サプリが『サガ・クロニクル』です。出版元はKADOKAWAではなくゲームフィールドなので注意。

*33:ゲームバランス的には2.0版になっています。敢えて参照するよりも、自作した方がいいかも知れません。

*34:パーフェクト・シリーズの登場以降、ローカルデータ(『超上級』P24、『DSG』P22)という選択ルールの存在自体がなかったことにされようとしている気配があります。『SKG』では既にサハギンとフェイがローカルデータではない扱いになったし、『PSG』ではもはやローカルデータの記述がありません。

『ドラクルージュ』における「耽美」を言語化する試み

 まずはこちらを|https://togetter.com/li/1006240


 耽美の捉え方は人それぞれなんですが、個人的に『ドラクルージュ』で意識しておくといいと思う「耽美」の範疇についてある程度言語化しておきます。
 ここでは「耽美」というものを幾つかの要素に分けて捉えます。『ドラクルージュ』のルルブを読んでキュンと感じる萌えポイントを要素化したものとご理解下さい。

概要

 思った以上に長文になったので4要素についてダイジェスト紹介します。

  1. 職業英雄(麗人に耽る)
  2. 異世界感(世界に耽る)
  3. 悲劇の美(余韻に耽る)
  4. ゆかしさ(妄想に耽る)

【職業英雄】
 ノブレス・オブリージュとはいわば、邦を統治する者としてのプロ意識です。民が困る、堕落者を出るといった案件は騎士にとっては職務上のミスです。私たちはしばしば仕事のできる先輩に憧れを抱きます。ただ、仕事できるアピールしてくる人はウザいですね。視点が高く、失敗は素直に認め、華麗に優雅に当然のようにリカバーできるカッコイイ人になりきって(耽って)遊べるというわけです。

【異世界感】
 常夜はある種の美しいものを詰め込んだ異次元です。常夜では独自のルールが支配していて、現実生活では見慣れない心ときめく舞台装置に彩られます。私たちが現実世界の一員であることを忘れて、異世界の因果律にリアリティを感じ、能動的に常夜の世界で生きようと藻掻くとき、美しい常夜に耽ることができるのです。

【悲劇の美】
 堕落とは悲劇です。絶対悪ではなく、かつて善だった者の末路なのだから。そして騎士たちは例外なく堕落する可能性を孕んだ存在です。恋のため、戦いのため……。堕落者と対峙した時、堕落者の生い立ちに共感を抱きます。「なぜ討たねばならぬのか」と感情が使命を留めるとき、ドラマが生まれます。そして、断罪した後の「余韻」に耽ることで心が洗われるのです。

【ゆかしさ】
 直接的な表現よりも、相手に想像を促すような表現の方がエロティシズムを感じます。人は答えを教えられると探究することを止めてしまいます。期待を抱かせつつ、完全には満たされないように期待に応えるのが魅力的です。分かりそうで分からない事柄について相手は能動的に想像を始めます。この能動的な想像が理想の物語への没入感を高めます。

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サプリが品薄になっていることを憂う

 2016年に改訂版が出た。改訂版はデキがいい。有用なスキルが選択されているし、ワールドセクションもきちんと改訂されていて、大事な情報が詰め込まれている。だが「次に」買うべきサプリがないのが悲しい。

 『上級ルールブック』は良いサプリだった。『基本』で遊んだ新規参入者が「次に」買うべきサプリとして明確だった。必要なルールがあって、スキルとアイテムの追加データがバランスよく載っていた。更に称号クラスまで遊ぶことができた。

 今の環境にはそういうサプリがない。『SKG』にも『ITG』にもスクウェアルールがない。『EXB』を入れたら3冊買わないといけない。軽い気持ちで次に進めないのだ。おまけに『SKG』も『ITG』も入手が難しくなっている。Amazonでは定価より高く取引されている。『SG2』の高騰ぶりは笑うしかない……。

 『EXB』のあとがきでデザイナーが『EXB』は「「上級ルールブック」の後継とは呼べない」と書いていたけど、その通り。『上級』は参照性が悪いながらも、ガチ勢じゃない人に安価で質の高いプレイ環境を提供していた。サンプルキャラもいいけど、スタートセットもいいけど、やっぱり『AR2E』はキャラビルドが醍醐味だと思う。その醍醐味を堪能してからでないと、深みに嵌れない。どのスキルに、どの組み合わせにと迷っている時間が楽しいのだ*1

 『SKG』『ITG』から幾つかのデータを再録して、『EXB』から幾つかのルールを再録したようなサプリがあれば理想だ。ファンとしては少なくとも『SKG』と『ITG』の再販を切望する。

*1:そういう意味で『SG2』は魅力的なサプリだ。地域クラスは癖があり、プレミア感があって良い。今の段階ではアルディオン大陸限定になるが、『サガ・クロニクル』ならば『SG2』と同じ地域クラスが掲載されていて価格的に入手しやすい。

ロールプレイ重視卓

卓募集などでよく見かける「この卓はロールプレイ重視卓です」という表記。
これが一体何を意味しているのか、分かるようで分かりません。

今回は「ロールプレイ重視卓」の意味について、幾つかの場合に分けて意味を考えてみることにしました。

攻略を重視しない卓

 ロールプレイ重視という言葉が、「ゲーム性重視」と対比される概念だとするならば、ロールプレイ重視卓は、目的を達成するために常に最適行動をとること*1を卓の合意事項としない……という含みをもちます。
 要するに、効率の悪いキャラビルドを許容する態度や、戦術上の判断ミスを笑って許す態度が求められるという意味です。強いか弱いかでキャラクターを作成するのではなく、好きなキャラクターを作ることが尊ばれます。難易度は低めに設定されていて、勝つか負けるかのギリギリの戦いを楽しむのではなく、好きなキャラクターでそこそこの難易度の冒険をして、満足する卓を指向しています。暗に「ガチ勢は参加しないでね」と言っています。

キャラクターを演じる卓

 それぞれが個性的なキャラクターを作成し、GMはキャラクターの個性が生きるようなシチュエーションを用意します。キャンペーンプレイでは、プレイを積み重ねていく中で、プレイングの中に徐々にキャラクター性が滲み出てくるものですが、そうではなく、公式リプレイのように、予め各プレイヤーが担当するPCの個性を打ち出すところがキャラクターを演じる卓の特徴です。
 キャラクターを演じる卓では、キャラクターの設定について丁寧にGMや他のプレイヤーと打ち合わせをすることが想定されます。セッションの第0回として「キャラクター作成回」を設けて、互いに相談し合える環境で、戦闘能力だけでなく、キャラクターの来歴や性格、立ち位置などについても相談します。掲示板でやり取りをするケースもあります。いわゆるハンドアウトを使えば、ある程度はこれに近いプレイングができますが、ロールプレイ重視卓ではもう少し踏み込んだ形で打ち合わせが行われるはずです。*2キャラクターをゲームの駒としてしか見なさない態度は忌避される傾向にあります。

世界観を楽しむ卓

 世界観を楽しむ卓では、そのシステムが想定する世界観に浸ることが指向されます。ホラーものなら、ホラー小説の登場人物らしい行動様式が望ましく、ファンタジー世界なら、プレイヤーはエルフならエルフらしく、ドワーフならドワーフらしく振る舞うことが期待されます。世界観から逸脱した「変なキャラクター」は忌避される傾向にあります。
 世界観を楽しむ卓は、そのシステムの愛好者、あるいは、そのジャンルの作品を好きな人たちが、非日常体験に没入し、その世界観のことが好きな気持ちを共有するための卓です。その世界観に対して敬意を払えない人は参加すべきではないし、その世界観をよく知らない人は楽しめない可能性があります*3*4
 私の主観から言えば、専ら「世界観を楽しむ卓」を「ロールプレイ重視卓」と表現するケースは稀だと思いますが、こういったニュアンスを含んでいるケースはあり得ると思います。

リアル交渉やはったりを推奨する卓

 問題解決手段として、ダイスを使って判定するよりも、プレイヤーの力量で交渉やはったりを行い、状況に合致しているかどうかをGMが判断するタイプの卓があります。通常、交渉技能が設定されていないシステムでは、交渉が行われる場面が想定されていないはずですし、交渉技能が設定されているシステムでは、ダイス等によって交渉の成否が判定されることが想定されているはずなので、プレイヤーの力量によって交渉を行うことは、(そういうシステムでない限り)GMがそのように仕向けなければ成立しません。
 各プレイヤーのリアル交渉能力が想定可能な顔なじみのプレインググループ以外の場面でこうした裁定基準を持ち出すと、公平さが担保できない(楽しめない人が何人か出てくる)という問題が発生します。十中八九「地雷卓」だと思って間違いないでしょう*5

*1:ロールプレイと同様に「ゲーム性」という言葉も多義的です。ここでは「目的を達成するために常に最適行動をとる」という表現をしましたが、ロールプレイの対比になる用語としては意味が狭いことは自覚しています。例えば「新しく発売されたサプリに載っているスキルを試したい」とか「街に戻ってみると裏切りそうだった依頼人があっさり死体で発見された」みたいな状況はゲーム的なシチュエーションでありながら、「最適解」を目指すプレイングとは異なる方向性をもったTRPGの楽しみでしょう。しかし、こうしたギミック系(?)は一般に「ロールプレイ重視」といった場合に対比されるシナリオ傾向とは違うように思えるのです。

*2:キャラクターを演じる卓のバリエーションに「創作重視卓」があります。セッション中、GMのシナリオに付け足す形で、その場でお話を思いついて、皆で物語を創っていく感じの卓です。それぞれのプレイヤーが専ら各PCを演じるというよりも、全体的なストーリーに目を配って、シーン開始時にプレイヤーどうしで打ち合わせをしたり、GMに「こういうシーンを作りたい」と提案したりして、物語の共同執筆者のような立場からセッションに参画します。ルーリングに関してはGMが担当しますが、プレイヤーは例えばゲーム性とは無関係なエキストラの演出などを勝手に行うことが基本的には許されます。
 また「決断重視卓」というのもあります。PCに対して、キャラクターとしての決断を迫る感じの卓です。よく考えられたシナリオの場合、キャラクターとしての決断が物語を左右していく感覚が味わえ、魅力的で遊び堪えのあるセッションになるはずです。一方で、セッションの行く末をプレイヤーの自由意思に放り投げて、GMはプレイヤーの決断した結果を機械的に処理するだけの卓においては、物語としての価値は生まれにくく(ドラマチックではない)、うまく噛み合わないことが多いです。そうなれば決断することの意味が薄らいでしまうでしょう。

*3:上手なGMならば、自分が好きな世界観を布教するために、非常に手の込んだやり方で初心者でも楽しめるセッションを提供してくれますし、そういう卓は自分の世界を広げてくれる、忘れられない卓になるはずです

*4:世界観を楽しむ卓の亜種として、「そのシナリオの世界観」つまり「シナリオの背景設定」を楽しむという傾向もあるかも知れません。失踪した依頼人を捜し出す過程で、依頼人の正体や事件の全容が浮き彫りにされていくようなシナリオ。もはやPC自身のロールプレイとは無関係ですが、「ストーリー重視」のことを「ロールプレイ重視」と表現することも稀にあります。

*5:身内のノリで楽しんでいる様子を伝えるリプレイやプレイ動画の中には「リアル交渉」裁定をするものがあるかも知れません。リプレイのノリが全てだと受け止めている人にとっては、公平に感じるかも知れません。