読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

lib14's TRPG library

TRPGに関するメモや随想など

FS判定のバランスについて

■FS判定の意義

 FS判定は「ただダイスを振るだけ」「目標値との差分を参照して進行値を出すのが複雑」などと思われがちですが、使いこなすことができれば、戦闘ばかりで単調なシナリオにスパイスを加えたり、ゲームシステムを利用してロールプレイを誘発しドラマチックな展開にもっていったりすることができる便利なツールです。
 非戦闘手段による問題解決をPCに提示したいときや、常に変化し続ける冒険的状況をゲーム的に表現したいときに便利です。またプレイヤーのアイディアで物語が変化し、シナリオで想定していなかった状況へのアドリブ対応にも使えます。

■FS判定の利用目的

 GM、あるいはシナリオ作成者は、FS判定を、どのようなゲーム体験をプレイヤーに与えるものとして位置づけているかを想定しておかなければなりません。以下A~Eは私が想定するFS判定の利用目的です。一つのFS判定が、複数の利用目的に貢献する場合がありますが、優先順位をつけておくことを推奨します(例:まずDありきでBも兼ねる)。
A:PCがそれぞれの得意分野で活躍し、キャラを立たせるため
B:PCどうしが協力しないと解決できない障害を用意し、PC間の絆を際立たせるため
C:判定系のスキルを使用させ、支援キャラ、技能キャラを活躍させるため
D:ゲーム中盤でフェイト、アイテムなどを消耗させ、危機感を出させるため
E:戦闘を複雑で面白いものにするために

■A:ロール演出型(ゲーム的なキャラらしさを描く)

 キャンペーン序盤に位置づけておくのがよい。
 市街地での逃走劇など、物理的な障害と、知力や精神が関係してきそうな障害の両方が出せそうなシチュエーションを用意する。
 参加人数は1人、イベントは進行値3~4ごとに変化するようにし、完了値はPC人数に合わせて14~18程度にしておく。1つ1つの目標値は低めに設定しておくこと。具体的にはCL1~3ならば目標値は8~10ぐらいとする。支援判定に使用する能力値は進行判定と同じにするか、シチュエーションに合ったものにするとよい。
 各判定能力値は【筋力】【敏捷】【知力】【精神】に設定しておくと幅広く使える。
 GMは進行値が上昇した際に、「誰の活躍で何がどうなったのか」をしっかり演出するようにしたい(支援判定含めて)。

■B:ドラマチック型(連携と駆け引き感を演出する)

 FS判定は進行判定(メインで問題解決する)と支援判定(その手伝いをする)によって構成されているという点が重要である。FS判定ではイベントごとに能力値が変化したり、「行動済のため動けない人」が存在したりするため、「誰がメインをやるか」「サポートは誰がどのようにやるか」について頻繁に作戦会議を開く必要が生じる。戦闘では「いつもの役割分担」で済んでいたギルドメンバーが、改めて連携を取らされることで、ギルドメンバーの違った一面を見ることができるチャンスである。
 参加人数は2~3人とし、支援判定は進行判定とは別の能力値にするか、「うまくシチュエーションに合った演出ができれば、好きな能力値で判定していいですよ」とプレイヤーに伝えるとよい。イベントは頻繁に変わる方が望ましいため、3ごとに変化するように設定する(目標値が高い場合は2ごと)。能力値は多様であることが望ましいが、無理にバランスを取る必要もない。全ての状況下で支援に回るキャラクターがいても構わない。重要なのは進行判定の能力値がシチュエーションに合致していることと、支援判定の演出がしやすいように時間や場所などの場面設定がしっかり伝わることだ。
戦略性を出すため、次のイベントに関する情報、どの能力値の判定がきそうなのかを推測できるような描写を入れることで、プレイヤーに「駆け引きっぽい」プレイング体験を与えることができる。この描写は「引っかけ」を抜きにして、素直である方が望ましい。誰が先に判定するか、誰がフェイトを突っ込むか、誰が支援に回るのか、そして支援判定のためにどんな演出(ロールプレイ)をするのかについて、あれこれと考えてもらいたいからだ。不確定要素があまりにも多すぎると、プレイヤーは考えることを放棄してしまい、ただダイスを振らされるだけの作業になってしまう。

■C:技能判定型(折角取ったスキルを活躍させる)

 このタイプの目的のためにFS判定の場面を用意しようと考えているGMは、まず技能系一般スキルについて一通り把握しておかなければならない。技能系一般スキルとは、特定のシチュエーションにのみ使える一般スキルを指す。
●筋力《アスレチック》《ウォータースイム*》●器用《リムーブトラップ》●知力《アイデンティファイ》《モンスターロア》《アルケミーノウリッジ》《ヒストリー》《ミュトスノウリッジ》《マジックノウリッジ》《アストラルノウリッジ》《ロイヤルノウリッジ》●感知《ファインドトラップ》《リサーチ》《サーチリスク》《ビジランテ》《トラッキング》●精神《オピニオン》《ブラフ》《インサイト》(*印は該当能力値以外でも使用できる可能性あり)
これら技能系一般スキルの他にも、アイテム、あるいはある判定を強制的に別の能力値に変更してしまうスキル、《ブレッシング》《ダンシングヒーロー》《マドリガーレ》など、非戦闘時の判定にも効果を発揮する汎用的な達成値上昇スキルも役に立つ。
ともかく、FS判定において[トラップ解除]や[アイテム鑑定]を要求してはいけないルールはない。「薪割り」と称して、「種別:斧」の武器を使用した命中判定と言うことだって可能だ。「交渉のための【精神】判定」と言えば《オピニオン》の活躍の場と言えし、ロールプレイ次第では《ブラフ》が使えるかも知れない。具体的なスキルを思い浮かべながらシチュエーションを考えていくというわけだ。
ちなみに、このテクニックはFSでなくとも、通常の判定の場面でも応用ができる。例えばダンジョンの部屋の中で「鍵」を探すようば場合、[情報収集]として扱うように宣言しておけば、シティアドベンチャー用に取得した《リサーチ》が無駄にならずに済むし、事前に噂話として聞いていたことにして《ストリートワイズ》や《グレープバイン》を活躍させることもできる。
ルーリングの基本的な考え方としては、なるべく拡大解釈を許容すること。《マジックノウリッジ》が適用されるようなシチュエーションで、《ミュトスノウリッジ》が適用されてもおかしくないような場合、《ミュトスノウリッジ》も適用されることにしておくのがよい。合言葉は「もう単なるフレーバーとは言わせない」である。

■D:リソース削り型(危機感の演出)

 リソース削り型は、名前に反して、プレイヤー心理を突いた文系っぽいシナリオ設計が要求される。
 ここではFS判定に失敗したらどうなってしまうのかを明確にしておくことが重要である。初心者向けのシチュエーションとしては「ボスが強くなる」「モブが5体追加される」といった分かりやすいものを推奨するが、なるべくなら「武器を敵に奪われる」「ヒロインがエネミーとして参戦する」「キャンペーンでお世話になったNPC一人がランダムで妖魔化する」といった具合に、なるべくえげつないペナルティを用意しておくとよい。そうしておくことにより、プレイヤーは、少しばかり目標値が低くても、本気でフェイトをつぎ込んでくれるはずである。事前にヒロインとの交流シーンを丁寧に描いたり、マスターシーンを挿入したりして、なるべくプレイヤーに感情移入させるように工夫したいところだ。
 さて、リソース削り型のFS判定において、最も簡単にリソースをつぎ込んで貰える方法は目標値を高く設定しておくことだが、あまりオススメしない。戦闘では、ダイス目が悪いことによるエラーHPやMPといったリソースの消耗で吸収してくれるが、FS判定におけるエラーは残りラウンド数に直結する。基本的に『AR2E』はリソースの消費によってエラーを回避し、リソースの消費によってドラマを”購入”するゲームだ。理不尽に目標値が高い判定によってドラマが決定してしまうのは、『AR2E』の基本的な文法から逸脱してしまう。そしてそういう状況に不慣れなプレイヤーから絶望感が漂い、良いプレイ体験が得られない可能性が高い。確かに終了条件を設定せず、ラウンド更新ごとにHPロスを受けるというルールを設定すれば戦闘と同じよう処理できるが、もはや戦闘でよい。それよりも数学的に成功する確率が高い状況下で、えげつないペナルティを提示した方が盛り上がるし、エラーも発生しにくい。また、エラーに対する納得度も高いと思われる。
 実はD型は危機感とは逆の方向でリソースを削らせることもできる。すなわち追加報酬である。「FS判定に失敗すれば何も起きないが、成功すればアイテムがもらえる」と言われれば、挑戦してみたくなるのがプレイヤー心理というものだろう。彼らが消費可能な範囲内ならば高い目標値、あるいは高い完了値を設定してリソースを削りまくっても許されるだろう。しかし報酬はプレイヤーの納得のゆくものでなければならない。最も簡単にプレイヤーを納得させる方法は、FS判定をする前に、報酬が何なのかを教えてしまうことだ。それでは興が冷めてしまうというのなら、それが何なのか想像がつくように仄めかすことだ。ただし、このやり方はリソースを削りつつ、別のリソースを与えることに他ならない。狡猾なプレイヤーは誘いに乗らないこともある。それゆえに「挑戦すること自体がワクワクするような体験である」と思わせる仕掛けがあるとよい。多少は不利な挑戦であっても、プレイヤーはロマンに対価を払ってくれるだろう。

■E:戦闘複合型(戦闘の勝利条件としてのFS判定)

 『神曲奏界ポリフォニカRPG』に「ショート・グッドバイ」というシナリオがある。FS判定が初めて搭載されたシナリオである。このシナリオのクライマックスフェイズでは、意固地になった元契約精霊がPCたちに戦いを仕掛けてくるのだが、PCは戦闘で彼女を倒してもいいし、FS判定で彼女を説得してもいいという仕掛けになっている。
 FS判定は説得や装置の破壊など、「敵の全滅」以外の勝利条件をもたらしてくれる。特に妨害者と交戦しつつ行うFS判定は、「敵をどこまで倒すか」「進行判定は誰が行うか」といった戦略性を出しつつ、従来の戦闘用のスキルと、判定用スキルの両方を活躍させることができる。
 全般的に戦闘中のFS判定では、戦闘行為にメインプロセスを取られてしまうため、支援判定が起きにくい(支援判定を重視するB型とは相性が悪い)。このため、各進行判定の目標値を低くしておくか、完了値を低くしておくことを推奨する。
 ここで、戦闘におけるFS判定の位置づけについて幾つか分類しておく。

●FS判定に成功することが勝利条件

 例えば妨害者がいる中で「粛正装置を止める」など。目標値や完了値がある程度高めでも構わない。

●FS判定に成功することが事実上の勝利条件

 エネミーを全滅させてもいいし、FS判定に成功してもいいと言いつつ、エネミーが「シナリオ1回」級の強いスキルをラウンド1回使ってくるなど、事実上、FS判定の成功しなければならない場合(《インタラプト》や《蘇生》で切り抜けられるラウンド数が事実上のリミットとなる)。プレイヤーは敵の戦力について理解する必要があるという点で、上記よりも複雑さは増すため、目標値や完了値を高くする必要はない。

●FS判定に成功することが勝利条件の一部

 「魔族の真の死を与えるための条件を満たす」→「敵の魔族を倒す」のように、FS判定に成功することが、戦闘で勝利するための前提条件となっている場合。どちらを先に解決しなければならないかとう駆け引きが発生しないため、A型やC型と組み合わせやすい。

●FS判定に成功することが勝利条件の選択肢

 例えば「魔女パンドゥーラを倒す」か「結界を破って姫を助ける」かをプレイヤーの意思で決めることができ、ギルドメンバーの能力のバランスによってどちらが有利になるのかが変わるような場合。

●FS判定に成功することで戦闘で有利になる

 戦闘に対して完全に従属的な立ち位置となる。例えば魔法防御力を+30する装具を身に付けた敵から、装具を引き離すために【筋力】や【敏捷】を中心とするFS判定を要求するような場合、プレイヤー陣は、前衛のウォーリアやシーフが「物理攻撃で殴る」か「メイジのためにFS判定に成功する」かを相談しなければならない状況になる。特に完了値を低めに設定しておくとよい。

■目標値と完了値

 目標値は高すぎるとエラー(事故)が起きやすいので、低めに設定しておくことをオススメします。ただし、完了値を低めに設定しておけば、目標値を高くしても構いません。進行値はあまり増えないけれど、ゴールには近づくという状況が再現できます。進行判定でクリティカルが出たときや、判定ブースト系のスキルを使いまくったときに猛威を振るいます。
 一方で目標値を低く設定し、完了値の方を上げておくと、支援判定の意味が薄くなり、判定ブースト系のスキルの意味も薄くなります。逆にGMにとっては、安定して各イベントの演出ができ、FS判定を使って物語の進行を演出しやすくなります。

■計算式っぽいもの

期待値=13+(CL÷3)+(CL÷5)
修正=(PC人数-参加人数)÷2
難易度={易しい=期待値-3}{普通=期待値-1}{厳しい=期待値+1}+修正
上昇値={易しい=3}{普通=2}{厳しい=1}
完了値=上昇値×参加人数×終了ラウンド数

この計算式っぽいものを何となくの基準にして、FS判定の利用目的に合わせて微調整します。