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lib14's TRPG library

TRPGに関するメモや随想など

マスタリング

交渉の裁定について

 NPCとの交渉を技能やアビリティではなく、ロールプレイ(口プロレス)によって解決するという考え方についての考察。

基本的なスタンス

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 上の図は卓の状況と交渉の解決方法を対応づけたものです。GMはシステムの性格と、シナリオの価値を理解したうえで、プレイヤーの状況やセッションの残り時間等に合わせて適切な裁定(どのルールを使用して状況を解決するかを決定)をするのが理想です。そこで私なりの裁定基準を表にしてみようと試みました。もちろん、他の状況がそれを許さない場合もあるでしょうけれど*1、とりあえず、こんなふうに考えていますという表です。
(図中*1)交渉をロールプレイで解決する場合、NPCの立場の一貫性や、プレイヤーにロールを把握させるプロセスの計画が大切。
(図中*2)交渉をロールプレイで解決させる場合、「判定」に慣れたプレイヤーとの間のギャップを埋める工夫が大切。

口プロレス

 口プロレスは楽しいものです。私は一定の条件下では寧ろ、口プロレスは推奨されるべきであり、セッションの良いスパイスになるとさえ思っています。口プロレスの良さとして

  1. キャラメイクが苦手でもコミュ力でカバーできる
  2. 状況を打破する手立てがない時の救済措置になる(特に昔のシステム)
  3. プレイヤーの「知恵」で状況を打破したというカタルシスが得られる
  4. GMがどこまで認めてくれるかスリリングな駆け引きが楽しめる*2

 といった点が挙げられるでしょう。しかし、一般的に言われているように、交渉技能等が実装されているシステムで敢えて口プロレスをする行為は「狡い」とか「マナーが悪い」といった印象をもたれる可能性もあります。
 交渉技能など、交渉のためだけに存在するルールが実装されていないシステムを幾らか例を挙げられるでしょう。そういうシステムで、折角交渉が得意なキャラクターを作成したのにロールプレイで解決しろと言われたら、損した気分になります。ただし、キャラメイクのうまいマンチばかりが活躍してしまう*3という状況を打破する一つのやり方としては冴えています。ルールに基づく公平性か、みんなで楽しくやる平等感か、状況によって違います*4

その他補足

 TRPGには大雑把に言って、問題解決指向の遊び方と、物語創造指向の遊び方があると思っているのですが、問題解決指向、つまり敵を倒したり謎を解いたりすることに価値を置く遊び方の場合、ロールプレイによる交渉解決は「常に口がうまいプレイヤーが活躍する」状況をつくってしまって不平等感を生みます。だたし、全てのプレイヤーの口の上手さがだいたい同じぐらいで、ちょうどいいライバル関係が成り立っている場合は例外です。そういう場合は、お互いが刺激しあって、よいセッションになるはずです。
 またシミュレーショニスト*5の立場からすると「知力が低いキャラが交渉がうまいのはおかしい。もっとお馬鹿なロールプレイをするべきだ」という批判が出てくることになります。ゲーミスト*6からすれば「知力判定は苦手だから別の戦略、つまりロールプレイによる解決を試みただけ」なのですが、シミュレーショニストからすれば気持ち悪いのです。「なぜあなたは知力が低いのに、今のような高等な言いくるめができるのですか?」という質問に答えられなければなりません*7
 一方で物語創造指向の遊び方、つまりキャラクターらしさを強調し、物語が完成する過程に価値を置く遊び方の場合、技能による解決は「折角キャラクターらしさが表出する場面なのに、ただダイスを転がすだけなんてドライ過ぎて面白みがない!」と思うはずです。特に自作シナリオを作ることができるGMは物語の創造に適性や興味がある人が多いです。そういうわけで、プレイヤーに対して「交渉は技能じゃなくてロールプレイでやってください」と要求したくなるのです*8。結論から言えば「人を選べ」あるいは、「無理強いをするな」さもなくば、「やるならちゃんと着いてこられるように綿密に計画して手順を踏め*9」ということになります。

*1:その最たるものは自分の能力の限界だったりしますよね。

*2:意外と忘れがちな観点です。ルールに対してまじめで杓子定規な感じのGMに仕掛けると嫌がられる可能性が高いので、初見さんには仕掛けない方がよいと思います。

*3:キャラメイクのうまさによって活躍できる/できないが大きく変わるシステムもあれば、適当に作ってもそこそこ活躍できるキャラが作れるシステムもありますね。

*4:ルールを読み込むのが得意な人は「ルールで戦いたい」と思っているし、コミュ力のある人は「GMを言いくるめたい」と思っているわけで、結局の所、自分の得意なフィールドで戦いたいと思うのはどちらの側も同じです。「どちらの方が客観的にフェアか」という議論は不毛で、「ここに集った皆にとって最善は何か」とか「GMとしてどの種類のフェアネスを貫きたいか」という意思決定問題こそが本質です。そしてGMを含めた参加者は有耶無耶にせず、自分の思いを伝えることが大事です。

*5:Ron EdwardsのGNS理論において、ゲームの設定において何が最も現実的かという判断を行動原理とする人。

*6:Ron EdwardsのGNS理論において、問題を最も効率的に解決する方法は何かという判断を行動原理としている人。

*7:これを「納得させた者勝ちじゃないか」と言って批判する向きもあるのですが、かっこいいロールプレイをした人にリソースが配られるシステムが「かっこいい物語」を指向しているように、納得させられればOKという考え方は、「状況がイメージできること」を指向しているに過ぎません。シミュレーショニストにとって、現実味のないルールよりも、主観的に想像可能であることの方がはるかに重要なのです。問題はシステムがどの方向を向いているか、参加者がどの方向を向いているかという事です。

*8:市販のリプレイは読者に読ませるためのコンテンツなので、プレイヤーにロールプレイを強制することが許されます。プレイヤーはそうであることを前提に卓への参加を承諾したはずだからです。リプレイでのGMの振る舞いを「プロの人がやっている事だから」と無批判に踏襲してしまうと、実際のセッションでは通用しない場合があります。もし物語創造を楽しみたいのであれば、リプレイにおいて前提となっている「隠された合意」を「可視化された合意」にする必要があります。つまり、ぶっちゃけと摺り合わせです。

*9:この計画や手順についての指南書をよく知りませんが、私が以前、ロールプレイによる交渉が主要なゲーム体験(=そのシナリオの一番面白いところ)であるところの古い公式シナリオを回すことになったとき、PCの立場やNPCの立場と関係する事柄について何度も繰り返し印象づけたり、プレイヤーが自分のキャラクターを物語の中に位置づけているかどうかを診断するための小さな質問をシナリオの中に忍ばせたりしながら「プレイヤー自身が考えて全てをやり抜くこと」と「道を踏み外さないこと」を両立させるように努力しました。またPCの設定を積極的に取り入れたり、演出上のメリハリをつけるなどして物語に「参加すること」に対してテンションが上がるように工夫もしました。