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TRPGに関するメモや随想など

ロールプレイ重視卓

卓募集などでよく見かける「この卓はロールプレイ重視卓です」という表記。
これが一体何を意味しているのか、分かるようで分かりません。

今回は「ロールプレイ重視卓」の意味について、幾つかの場合に分けて意味を考えてみることにしました。

攻略を重視しない卓

 ロールプレイ重視という言葉が、「ゲーム性重視」と対比される概念だとするならば、ロールプレイ重視卓は、目的を達成するために常に最適行動をとること*1を卓の合意事項としない……という含みをもちます。
 要するに、効率の悪いキャラビルドを許容する態度や、戦術上の判断ミスを笑って許す態度が求められるという意味です。強いか弱いかでキャラクターを作成するのではなく、好きなキャラクターを作ることが尊ばれます。難易度は低めに設定されていて、勝つか負けるかのギリギリの戦いを楽しむのではなく、好きなキャラクターでそこそこの難易度の冒険をして、満足する卓を指向しています。暗に「ガチ勢は参加しないでね」と言っています。

キャラクターを演じる卓

 それぞれが個性的なキャラクターを作成し、GMはキャラクターの個性が生きるようなシチュエーションを用意します。キャンペーンプレイでは、プレイを積み重ねていく中で、プレイングの中に徐々にキャラクター性が滲み出てくるものですが、そうではなく、公式リプレイのように、予め各プレイヤーが担当するPCの個性を打ち出すところがキャラクターを演じる卓の特徴です。
 キャラクターを演じる卓では、キャラクターの設定について丁寧にGMや他のプレイヤーと打ち合わせをすることが想定されます。セッションの第0回として「キャラクター作成回」を設けて、互いに相談し合える環境で、戦闘能力だけでなく、キャラクターの来歴や性格、立ち位置などについても相談します。掲示板でやり取りをするケースもあります。いわゆるハンドアウトを使えば、ある程度はこれに近いプレイングができますが、ロールプレイ重視卓ではもう少し踏み込んだ形で打ち合わせが行われるはずです。*2キャラクターをゲームの駒としてしか見なさない態度は忌避される傾向にあります。

世界観を楽しむ卓

 世界観を楽しむ卓では、そのシステムが想定する世界観に浸ることが指向されます。ホラーものなら、ホラー小説の登場人物らしい行動様式が望ましく、ファンタジー世界なら、プレイヤーはエルフならエルフらしく、ドワーフならドワーフらしく振る舞うことが期待されます。世界観から逸脱した「変なキャラクター」は忌避される傾向にあります。
 世界観を楽しむ卓は、そのシステムの愛好者、あるいは、そのジャンルの作品を好きな人たちが、非日常体験に没入し、その世界観のことが好きな気持ちを共有するための卓です。その世界観に対して敬意を払えない人は参加すべきではないし、その世界観をよく知らない人は楽しめない可能性があります*3*4
 私の主観から言えば、専ら「世界観を楽しむ卓」を「ロールプレイ重視卓」と表現するケースは稀だと思いますが、こういったニュアンスを含んでいるケースはあり得ると思います。

リアル交渉やはったりを推奨する卓

 問題解決手段として、ダイスを使って判定するよりも、プレイヤーの力量で交渉やはったりを行い、状況に合致しているかどうかをGMが判断するタイプの卓があります。通常、交渉技能が設定されていないシステムでは、交渉が行われる場面が想定されていないはずですし、交渉技能が設定されているシステムでは、ダイス等によって交渉の成否が判定されることが想定されているはずなので、プレイヤーの力量によって交渉を行うことは、(そういうシステムでない限り)GMがそのように仕向けなければ成立しません。
 各プレイヤーのリアル交渉能力が想定可能な顔なじみのプレインググループ以外の場面でこうした裁定基準を持ち出すと、公平さが担保できない(楽しめない人が何人か出てくる)という問題が発生します。十中八九「地雷卓」だと思って間違いないでしょう*5

*1:ロールプレイと同様に「ゲーム性」という言葉も多義的です。ここでは「目的を達成するために常に最適行動をとる」という表現をしましたが、ロールプレイの対比になる用語としては意味が狭いことは自覚しています。例えば「新しく発売されたサプリに載っているスキルを試したい」とか「街に戻ってみると裏切りそうだった依頼人があっさり死体で発見された」みたいな状況はゲーム的なシチュエーションでありながら、「最適解」を目指すプレイングとは異なる方向性をもったTRPGの楽しみでしょう。しかし、こうしたギミック系(?)は一般に「ロールプレイ重視」といった場合に対比されるシナリオ傾向とは違うように思えるのです。

*2:キャラクターを演じる卓のバリエーションに「創作重視卓」があります。セッション中、GMのシナリオに付け足す形で、その場でお話を思いついて、皆で物語を創っていく感じの卓です。それぞれのプレイヤーが専ら各PCを演じるというよりも、全体的なストーリーに目を配って、シーン開始時にプレイヤーどうしで打ち合わせをしたり、GMに「こういうシーンを作りたい」と提案したりして、物語の共同執筆者のような立場からセッションに参画します。ルーリングに関してはGMが担当しますが、プレイヤーは例えばゲーム性とは無関係なエキストラの演出などを勝手に行うことが基本的には許されます。
 また「決断重視卓」というのもあります。PCに対して、キャラクターとしての決断を迫る感じの卓です。よく考えられたシナリオの場合、キャラクターとしての決断が物語を左右していく感覚が味わえ、魅力的で遊び堪えのあるセッションになるはずです。一方で、セッションの行く末をプレイヤーの自由意思に放り投げて、GMはプレイヤーの決断した結果を機械的に処理するだけの卓においては、物語としての価値は生まれにくく(ドラマチックではない)、うまく噛み合わないことが多いです。そうなれば決断することの意味が薄らいでしまうでしょう。

*3:上手なGMならば、自分が好きな世界観を布教するために、非常に手の込んだやり方で初心者でも楽しめるセッションを提供してくれますし、そういう卓は自分の世界を広げてくれる、忘れられない卓になるはずです

*4:世界観を楽しむ卓の亜種として、「そのシナリオの世界観」つまり「シナリオの背景設定」を楽しむという傾向もあるかも知れません。失踪した依頼人を捜し出す過程で、依頼人の正体や事件の全容が浮き彫りにされていくようなシナリオ。もはやPC自身のロールプレイとは無関係ですが、「ストーリー重視」のことを「ロールプレイ重視」と表現することも稀にあります。

*5:身内のノリで楽しんでいる様子を伝えるリプレイやプレイ動画の中には「リアル交渉」裁定をするものがあるかも知れません。リプレイのノリが全てだと受け止めている人にとっては、公平に感じるかも知れません。