lib14's TRPG library

TRPGに関するメモや随想など

りゅうたま シナリオ

イーハトーブの輝く丘に


丘の上に大きな椅子と小さな椅子。
コネコゴブリンの親子が西の空に沈む太陽を見ている。
「父ちゃん、沈んだ太陽はどこへ消えていくの?」
眩しそうに目を細めながら、西に向かって右手を突き出す。
立派な髭をたくわえたコネコゴブリンがピンと指を立てて答える。
「仕事が終わった太陽は、退職金をもらって悠々自適に旅に出るのさ」
それを聞いた子どもコネコゴブリンは、椅子に座ったまま、小首を傾げた。
「旅に出た太陽は星を巡り、やがて光は弱くなってしまう」
「弱くなったら、どうなっちゃうの?」
「年を取ってしまったから、もうじき死んじゃう!」
「ええ! 死んじゃうの!?」
「でも、死ぬときは故郷に帰りたいから、大急ぎで帰ってくるのさ」
「そうだね、大急ぎで帰らないと」
「それが、流れ星さ」
その時、東の空が光った。
「あ、流れ星。父ちゃん、流れ星だよ!」
「うん、あれはきっと5年前の太陽だな」
「今の流れ星、どこを旅してきたんだろう」
「さてね? なにせ、空は広いから……」*1




■旅行シナリオ

名前:星降る丘
風景:満天の星空
特徴:本当に星が降ってくる
動機:”月明かりの都”ユールーナへの道中
出発:乱れ雨の草原、ホタルの飛び交う川辺
難関:星降る丘
季節:夏
竜人:緑竜を推奨

■プレイヤー向け情報

 【レギュレーション】
 PCは初期作成
 ”月明かりの都”ユールーナに向かっているという設定
 【シナリオの方向性】
 旅情系シナリオ(景色や人との出会いを楽しむ)
 【導入】
 世界で一番西にある都ユールーナ。
 人間とコネコゴブリンが仲良く暮らす月明かりの都。
 あなた達はユールーナに向かう旅の最中です。
 どうやら、星降る丘という場所を通らなければならないようです。
 【状況】
 買い物のタイミングはあります。お金を余らせておいても大丈夫です。

■シナリオ構成

OP:乱れ雨の草原にいるパーティ。連日雨だったのが晴れ、夏の日差し。コンディション・チェック
A1:パーティは日差しの照りつける草原を移動する。草原+暑い。移動チェック(7)、方向チェック(7)
TP:小川の橋の近くで野営をしている旅人のパーティと出くわす(野営チェック免除)。
 褐色のミンストレル、サラディ。巨漢のクラフト、ビーゴ。コネコゴブリンのマーチャント、クロ。
 ホタルの飛び交う川辺で、彼らと交流する。
 彼らから星降る丘についての情報を得る。〈伝承知識〉〈教養知識〉可能。
 クロと取引ができる。基本的に色々なものを取引できる。
A2:川が流れる一帯に出る。周囲に靄がかかり、小雨も降る。草原+雨+霧
 コンディション・チェック→移動チェック(8)→方向チェック(8)
TP:野営チェック(8)後、食べ物の臭いにつられてモブ・ビースト(P132)が1d6体やって来る。
 狩猟中のハンターはモブ・ビーストの痕跡(足跡や糞など)を見つける。
 戦闘以外の手段でモブ・ビーストを追い払うことも可能とする。その辺はGMのセンスに任せる。
A3:丘+曇りになる。
 コンディション・チェック、移動チェック(8)、方向チェック(8)、野営チェック(8)
 もしここで移動チェックに失敗すると、ハプニングとして変な形の岩で転ぶ*2。【大ケガ:8】を受ける。
CX:夜、テントの傍で大きな音がする。
 様子を見に行くと、地面に穴が空いている。
 「やあ、僕の名前はひこ星。今から彼女と1年に1度のデートなんだ。」
 一見すると普通の人間のように見えるが、顔が光り輝いているため、一目で彼が星だと分かる。
 「彼女へのプレゼントをこの星に落としてしまってね。一緒に探してくれないか。」
 「今夜中に見つけないと間に合わないんだ。」
 基本的には地形を目標とする[敏捷+知力]のチェックをする。
 失敗すると流れ星にぶつかって1d4のダメージ(防護点無視)を受ける。
 だいたい夜の21:00ぐらいからスタートして、1回のチェックに1時間を費やす。
 成功したなら「ひこ星の報酬表」を振る。
ED:天候が「晴れ」になる。
 「ここでお別れだね、ありがとう」と言ってひこ星は光になって星空にとけてゆく。
 空を見上げれば満天の星空。漆黒のキャンバスに無数の白い光。

■マップ

 ★---[A草30km]---○---[B草30km]---○---[C丘35km]---☆
A草:草原+暑い
B草:草原+雨+霧
C丘:丘陵+曇り
★:スタート地点
☆:ユールーナ(目的地)

■マスタリングの補助となる設定やデータ、ガイダンス

●ユールーナ

 本シナリオでは登場しないのだが、背景・PCのモチベーションとして意味をもつので紹介する。

街の名前:”月明かりの都”ユールーナ
街の規模:大都市(30000人程度)
支配体制:
地勢と気候:
代表的な建物:
特産品:
街の色・匂い・音:
街を脅かすもの:
その他:人間とコネコゴブリンが仲良く暮らす都。西の果てにある。

 予め「街づくり」をしておくことで、NPCが街の様子などを伝えられるかも知れない。
 「街づくり」においては、大雑把な設定が書けたら、PCとしてその街にどう関わっていくかを考えるように誘導する。
例えば「ミンストレルの~~さんは、ユールーナで何がやりたいですか?」だとか「村出身のあなたにとって大都市は初めてですか? だとしたら、どんな事に期待を持っていて、どんな事が不安ですか?」といった具合に質問し、各項目を具体的に埋めていく。
 「街づくり」はセッション開始前か、ユールーナの情報が出たときに行うことを想定している。

●登場NPC

 サラディ:20代女性。褐色のミンストレルで、踊り子。楽器はタンバリン。陽気で気さくだが根は頑固。「かわいい」物が好き。
 ビーゴ:30代男性。髭を蓄えた金髪のクラフトで、武器職人。言葉数少ないが気遣いのできる巨漢。
 クロ:マーチャントで、コネコゴブリンの雄。そろばんは魚の骨製。理知的だがお喋り好きでお節介が過ぎる。
 ひこ星:人間のようだが、実は星。遠く離れた国に恋人がいる。

●旅人との交流

 サラディたちはユールーナの側から東に向かって旅をしている。
 PCたちがNPCからユールーナの情報を得ようとする場合、「街づくり」のデータをNPCの口調で読み上げればよい。
 また、「ユールーナにどんな用事があるんだい?」とサラディは尋ねるかもしれない。
 プレイヤーは突然の質問に戸惑うかも知れないが、街づくりの時の発言を思い出しながら、「旅に出た理由」や「クラス」、パーティの仲間などに触れながら、GMとして、サラディに対して答えが言えるようにサポートしよう。
 サラディたちがユールーナを訪れた目的は「街づくり」の中から適切なものを選ぶとよい。例えば「特産品を調達しに来た」などである。
 PCたちはサラディたちと意気投合するかも知れないし、逆に「お友達になれない」と思うかも知れない。
○会話を弾ませるテクニック

  • 竜人はスロットorLPを消費して〈狩猟〉チェックに【フォーチュン】を使用する。

  これは〔おいしい食料〕を彼らに分け与えるロールプレイを誘発するためである。

  • PCの装備している〔中古の〕旅装が「実はかつてNPCが使っていたものだった」ことにする。

  アイテムを切っ掛けにして、当該旅装が活躍する地形を旅した話などを語りながら話題をつくることができる。

  • あるPCから聞いた話をうけて、別のPCに同じ話題を振る。

  PC対NPCで会話が閉じないようにする。PCどうしに話を広げていく。
○会話を終わらせるテクニック

  • どの程度「交流」すべきかの基準を考えておく。

  例えば、旅日誌に特定のPC・NPCの印象が一行程度書けるぐらいの交流で十分だろう。

  • 「夜が更けてきた、そろそろ瞼も重くなってきたようです」とナレーションを入れる。

  会話を打ち切るロールプレイを誘発するためである。

●星降る丘

サラディ「ユールーナの東の丘は『星降る丘』と呼ばれていて、夏になると満天の星空を見ることができるんだ。ここからだと、あと2日ぐらい歩かないといけないかな。その日は晴れるといいね。」
〈伝承知識〉8:世界で最も最後に夜が訪れる丘。全ての星が集まる星の終着駅で、満天の星空が拝める。
〈伝承知識〉10:文字通り、丘に星が降ってきたという伝承がある。丘のあちこちに流星岩があり、移動チェックに失敗すると大ケガを受けることになる。
〈教養知識〉10:星降る丘にたまに流星が落ちることがあるが、流星の岩は適度に穴が空いていて、体を洗う軽石としてうってつけである。

●動物の痕跡(モブ・ビースト)

ビーゴは旅先での危険について尋ねられると、有益な情報をもたらしてくれる。仲良くなれば尋ねなくても教えてくれる。
ビーゴ「この草原にゃ、モブ・ビーストが生息している。奴らは春が「旬」だし、そんなに数は多くないが、注意するといい。」
ビーゴ「ああ、そうだ。材料加工で採れる奴らの「牙」は50Gほどで売れるから、腕に自信があるなら挑んでみてもいいだろうさ。」
〈伝承知識〉8:かつて数万匹のモブ・ビーストが1つの群れを作り、国1つを丸ごと滅ぼしたという。
〈教養知識〉10:【体力】や【敏捷】は弱い人間程度しかなく、【知力】や【精神】は人間以下とされる。
〈動物探し〉地形:付近を縄張りにしており、襲われるなら野営後、食事を摂っているタイミングで襲われるだろう。

●彼女へのプレゼント表(1d4)

1:かわいい石鹸
2:ひかる手鏡
3:高品質の香水
4:魔法瓶

●ひこ星の報酬表(1d6)

1:ひかる風よけマント
2:ひかる背負い袋
3:ひかる食器
4:ひかる火起こしセット
5:ひかるぬいぐるみ
6:ひかる保存食

*1:コネコゴブリンなのに語尾に「ゴブニャ」がつかないのは何故か。本当はコネコゴブリンではないからです。

*2:以前に降ってきた星である