lib14's TRPG library

TRPGに関するメモや随想など

深層欲求が満たされない場合の問題行動

 深層欲求が満たされない場合、セッションを退屈に感じるだろう。依頼人から感謝の言葉がなかったり、報酬を出し渋られたりすると脱力感を覚える。結果を出したにもかかわらず評価されないからだ。あるいは、PCが名前で呼ばれなかったり、ダイスを振る機会が与えられなかったりすると疎外感を覚える。助言が多すぎたり、不確実性がなかったりすると、夢もロマンもなくなってしまう。
 支配欲求が満たせなかったプレイヤーは、GM裁定に対して文句を言い続ける、NPCに対して暴言を吐くなどの問題行動を起こしやすい。また慢性的に支配欲求が満たせない状態が続くと、プレイングの目的がシナリオ崩壊や度を超した口プロレスによる場の支配にすり替わってしまう。
 承認欲求が満たせなかったプレイヤーは、セッション中に寝る、自慢話を切り出す、スマホを弄るなどの問題行動を起こしやすい。また慢性的に承認欲求が満たせない状態が続くと、自分の殻に閉じこもったキャラクターを作ったり、GMやセッション時間を独占したりするようになる。またセッションに関係のない雑談も増える。
 成長欲求が満たせなかったプレイヤーは、他のプレイヤーに役割を押しつけたり、ミッションに失敗したことを、適切にバランスをとらなかったGMのせいにしたりする。また慢性的に成長欲求が満たされない状態が続くと、持論を譲らない頑ななプレイヤーになってしまうか、自分のPCに独自の「縛り」を設けて、相談なくパーティに不利な行動をとるなど、他のプレイヤーを巻き込むようなプレイングに走ることがある。
 プレイヤーの欲求を満たせないシナリオ、言い換えれば、プレイヤーの期待に添えないシナリオは、プレイヤーの問題行動を誘発するという点において、良くないシナリオである。プレイヤーの期待に添うというのは、プレイヤーの読み通りであることとは違う。「期待は裏切るな、予想を裏切れ」である。
 プレイヤーの欲求を満たせないことのもう1つの問題点は、間違ったプレイングを学習させてしまう点にある。間違ったプレイングを学習したプレイヤーは、欲求が満たされない屈折した気持ちを他の卓に持ち込もうとする。ここでいう「間違ったプレイング」とは、単に(その場にいる)同卓者を不快にさせるプレイングのことを指している。「問題行動」と同義である。

誤解に基づく問題行動とトラブルの回避

 一方でゲームとしてプレイヤーが判断を誤ったり、公正なランダム判定の結果、敗北したりする場合においてもフラストレーションが溜まることがある。この種のフラストレーションの原因はシナリオやマスタリングのせいではない。少なくともマスタリングのせいではない。前述したようにシナリオやマスタリングの不備による不満を[合理的不満]、そうでない不満を[非合理的な不満]と呼ぶことにする。
 どこまでを[合理的不満]と呼び、どこからを[非合理的不満]と呼ぶかは、倫理的議論の対象である。例えば「GMはダイス目を誤魔化すべきか」といった問題がそれに当たる。本論ではそこには踏み込まず、読者が暗黙の前提として想定している境界線があるものとして議論を進める(つまりこの分類の境界線は個々人の主観に依存する)。
 [非合理的不満]にはプレイヤー自身の問題と、時間制約やゲームシステムの不備、ダイス目など、誰の責任でもない問題の2種類がある。前者を[自己原因型の不満]、後者を[環境原因型の不満]、そして[合理的不満]を[他者原因型の不満]として整理しよう。

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プレイヤーは[自己原因型の不満]については、一切不満を言うべきではなく、むしろ悔悟・恥・屈辱等を感じ、次回以降のセッションに向けての教訓を得るべき場面である。[環境原因型の不満]に対しては、TRPG文化の発展のため、不満を口にするのは間違っていないが、そこのことでGMや他のプレイヤーを不快にさせるようなことをしてはいけない。
 問題なのは不満の原因について認識が食い違うことである。例えばプレイヤーが不満を感じたとき、GMは「それはシステムの問題だから仕方ない」と反論したとしよう。それに対してプレイヤーは「じゃあ、何でそんなシステムを選んだんですか!」と不満を露わにする場面だ。GMは[環境原因型の不満]だと思っているので自分に不手際はないと信じているし、プレイヤーは[他者原因型の不満]だと感じているので、開き直っているようなGMの態度が許せないのである。
 このような場面では、互いに相手の立場や気持ちを慮り、それぞれが落としどころをつけなければ、TRPG仲間として関係を継続させていくことが困難になる。ゲームは人を熱くするし、感情移入の度合いが高ければ高いほど、余計に不満も大きくなる。こういう場合、最も冷静でいることが求められるGMが先に折れる方がうまくいくことが多い。
 GMは[合理的不満]が起きないように気をつけることが必要であると同時に、プレイヤーが抱きやすい[非合理的不満]に対して積極的にケアをする態度が求められる。もしかすると[非合理的不満]を[合理的不満]と取り違えてしまうプレイヤーが精神的に未熟であるように映るかもしれないが、そのように誤解させてしまった自身の態度を振り返るべきなのだ。重要なのはどちらが「正しいか」ではなく、プレイヤーの不満を取り除き、セッションをメンテナンスし、プレイヤーの満足を高めることである。議論で相手を論破してもセッションに何の価値も生み出さない。GMが真に卓を支配できるのは、プレイヤーを満足させたときだけである。
 ただし例外がある。ある特定のプレイヤーの問題行動のせいで、他の多くのプレイヤーの満足度が下がっている場合である。こうした場合、問題行動を引き起こしているプレイヤーを説得し、行動を改めるように促す必要がある。
これは倫理(善悪)の問題としてではなく、政治(集団の意思決定)の問題として取り扱うべきである。「マナー違反だ」とか「それは求められているプレイングじゃない」とか「他人の迷惑を考えろ」とか「空気を読め」などと言ってはいけない。問題行動は、他の参加者から見たときにそう見えるだけで、本人にとっては問題行動ではないからだ。それを否定するならば、相手の尊厳を傷つけることになる。「あなたが悪い」ではなく「私が苦しい」というスタンスで行動を改めるように依頼するのが基本的なスタンスであるべきだろう。
 倫理とは、自身の尊厳が尊重される中で、「相手が不快に思っている」「自分が嫌な思いをした」「人に認められて気持ちよかった」などの経験を経て、個々人の中に形成されるものであって、誰かに押しつけられたり、誰かに押しつけたりすることは不可能なのである。自己の中にある基準として意味を持つものであって、集団としてどうあるべきかという問題に対しては無力である。ゆえに倫理観が対立したときは、感情論を持ち出す方がスマートといえる。どんな理論武装も、誠意ある心の叫びに勝つことはできない。

欲求を満足させること

 TRPGの目指す価値とは、言い換えれば、深層欲求を適切に制御することである。ゲームエンターテイメントとして、深層欲求を満たすことを目指しつつも、[非合理的不満]まで満たされるようにすることはできない。プレイヤーは常に[非合理的不満]を抱えるかも知れないというリスクを負っている。しかし[自己原因型の不満]は例えば[成長欲求]を満足させる素材に昇華していくべきだし、[環境原因型の不満]については、仲間と共に不満の解消方法について考えていくべきだろう。
 [合理的不満]という言葉に対し、GMが制御可能な欲求を合理的欲求と呼ぶことができるだろう。TRPGの価値は、合理的欲求を満たすことであり、合理的欲求の幅を広げることが、TRPG者としての成長であり、TRPG文化の発展に貢献することだと思っている。
 価値六相は、剥き出しの欲求を制御し、「欲望」を「楽しみ」のレベルにまで昇華したものなのである。ともかく価値六相の背後に深層欲求があることを押さえておくことは、トラブル回避と満足度向上において役に立つだろう。

価値六相の診断

 あるプレイヤーが、価値六相のうち、現在どの価値に比重を置いているのかを測定する心理学的ツールを作成することは可能である。当然、相手の心の状態など、完璧に測定することは不可能だが、セッション時のトラブルを避け、より満足度の高いセッションにしていくうえで実用に耐えうるレベルの測定ツールは実装可能なはずだ。具体的には例えば「チェックリスト」や「決定木」のような形を取りうるだろう。
 それとは別に、セッション中、あるいはセッションのための準備段階で(例えばオンラインセッションにおける掲示板でのやり取りなどで)各プレイヤーの発言や態度から、プレイヤーの傾向を読み取ることができるだろう。「何を意識しているか」「何を目指しているか」「何をしている時に一番楽しそうか」といった観点でみるのである。
 それぞれの傾向については各価値と、各深層欲求を参照して欲しい。

自分の指向を知る

 価値六相の利点は、自分のプレイングが目指している方向性を自覚できる点にある。これにより、同卓する参加者に自分の扱い方を説明することができる。GMや他のプレイヤーに診断されるよりも望ましい。自分で自分のことを説明できるので、卓の方向性についての舵取りに参画できるというわけだ。

私は基本的には[攻略性]重視のプレイヤーだが、倫理的なスタンスとしては[参加性]が大事だと思っているので、誰かが寂しいと感じることがないように配慮するつもりだ。またロールプレイは苦手だが、自分自身の幅を広げるために[創造性]を獲得できるようになったら面白いと思っている。

リプレイを読んでTRPGに興味を持った。リプレイでは参加者たちが面白可笑しくゲームを楽しんでいて、プレイヤーの選択次第で物語が変化していくのが素敵だなと思った。そういう意味では[参加性]や[遊戯性]が私の指向なのだろう。ただ、TRPGを始めたばかりで何をやっていいのか良く分からないので、まずは基本的なやり方を押さえて体験してみようと思っている。なので、今のところは[役割性]と[体験性]が私のスタンスだ。

 こんな具合に、価値六相を使って自分の立場を表現できる。この例からも分かるように、あるプレイヤーが、いずれかの相に当てはまるようなものではなく、1人のプレイヤー求めている価値に、複数の相を見て取ることができる。
 それぞれの相には楽しさの側面と、倫理的側面があって、そのどちらが欠けてもTRPGの価値として意味をなさないのだが、楽しさの側面は愉快なセッション経験によって強化され、倫理的側面はセッションの苦い経験によって強化される。私には、両面のバランスが取れているプレイヤーが魅力的なように思える。
 楽しさの側面しか強調しないプレイヤーは深層欲求が剥き出しにされた危うい状態と言えるし、倫理的側面しか強調しないプレイヤーは一緒にセッションをして楽しくないだろう。

各論:初心者対応のスタンスの違い

 支配欲求起源のグループ、つまり[遊戯性][攻略性][役割性]のグループは、戦場に生きている。初心者に対しては「対等」なゲーマーとして扱うので、基本的に突き放した態度をとる。自分でルールブックを一通り読むのが当たり前だし、ルールを誤解したときは「次は気をつける」のが基本だ。気の良いプレイヤーは初心者が良いプレイングをしたときに、賛辞を送るだろう。だが怖い人達は「こんな事も知らないのか」といった顔をして、初心者を置いてけぼりにする。
 承認欲求起源のグループ、つまり[役割性][参加性][創造性]のグループは、学生サークルのような雰囲気をもつ。初心者に対しては「後輩」として扱うので、懇切丁寧にルールを説明し、誤解なくプレイできるように適宜、アドバイスをする。気の良いプレイヤーは初心者が必要としている時のみ力を貸すだろう。だが上から目線の傲慢な人達は「こうした方がいいよ」と言いながら初心者の自己決定権を奪ってくる。
 成長欲求起源のグループ、つまり[創造性][体験性][遊戯性]のグループは、ネバーランドに生きている。初心者に対しては「転校生」のような物珍しい目で見る。ルールなんて横に置いて、私たちはあなたの事が知りたいといったスタンスで接してくる。気の良いプレイヤーは初心者が本気で楽しめるようにあらゆる手段を尽くしてくれるだろう。だが馬鹿な人達は独り善がりなTRPG観を押しつけて初心者を困惑させる。

旧版アリアンロッドサプリメント紹介

(文体が「だ・である」体になっていますが、ご了承下さい)


旧版『アリアンロッド』の各種サプリメントについての紹介。
主に2Eで資料として使いたいという奇特な方向けに書く。
2Eの時代から3年前の情報になっているので注意。

『トラベルガイド』(おすすめ度・高)

 エリンディル西方のワールドガイド。『西方ガイド』より値段も安く、網羅性が高い。4国家と「その他の国々」が掲載されている。シナリオやキャンペーンのフックになるような逸話(町の人々の話や、ダンジョンの噂)が地域ごとに掲載されている。ユニコーン伝説のような地元のおとぎ話の類から、バグベアの女王エフネに関する話まで、多種多様である。また暦、馬車、街道、船舶、城壁、地図、貨幣についての豆知識もある。
 以下に掲載されている都市の一覧を挙げる。括弧内は他に詳しい情報が載っているサプリを指している。
●ヴァンスター
・ヴァンスター(西方ガイド)
・ラクレール
・アルフィオレ
(西方ガイドにあるドゥルガーラは未掲載)
●エルーラン
・ログレス(西方ガイド、ダブルイメージ)
・コルム
・ルネス(西方ガイド)
●キルディア
・ミース(西方ガイド)
・メアンダール
・コンディート
(西方ガイドにあるカルカンドは未掲載)
●パリス
・ライン(旧版基本ルールブック、ファーストクエスト)
・クラン=ベル(西方ガイド、バトルフィールド
・カナン(西方ガイド)
(2E基本ルールブックにあるグランフェルデンは未掲載)
●その他の国々
・ディアスロンド(西方ガイド)
・ラーフ大洞窟
・テニア(超上級)
エルクレスト(超上級、エルクレスト学園ガイド)
・ダブラル
・ロダニア
●その他の地域
・霧の森(西方ガイド)
・ベルヴェ
・ルディオン山脈
・沈黙の氷原
・ティンダージェル(ドレッドダンジョン)

『エリンディル・レジェンドガイド』(おすすめ度・高)

 エリンディル西方各地の伝承と、リプレイの主人公たちの情報が掲載されている。
 72本の伝説が掲載されている(『西方ガイド』は18本)。神具や動物の王系の伝説など、『西方ガイド』に収録されていないものも数多くある。一方で「カエルの騎士」のように『西方ガイド』に再掲されたものや、「赤竜の保護者」のように『西方ガイド』にしか載っていないものもある。運用次第では旧版のデータをそっくりそのまま使える。
 リプレイ紹介パートは23ページほど。『レジェンド』の1巻までの情報が載っている。ダイナストカバル(『超上級』掲載)がここにきて初めてB5版のサプリメントに掲載された。
 また全2話(+3話目のシナリオフック)のキャンペーンシナリオ「第3次ギルマン戦争」が収録されている。『エリンディルウォーカー』収録の「動く島」とやや内容が被っているが、GF誌以外のサプリに掲載されている本格的なギルマン系シナリオである。

『上級ルールブック』(おすすめ度・中)

 ワールドガイドとしては、『トラベルガイド』に再掲されたものも含むので、あまり必要ではないが、墜ちる前のテニア(c.f.超上級)の設定が詳しく載っている。テニアを舞台にしたランダムダンジョンシナリオは、少し手を加えれば実現可能だろう。
 ワールドセクションの神々や魔法・呪歌などの設定は、プレイヤーとしてキャラクターを演じる際に役に立つかもしれない。また神々(七大神)がイラスト付きで掲載されている。


『ファーストクエスト』(おすすめ度・中)

 ”遺跡の街”ラインの詳しい設定と、B5版で4ページ程度だが、妖魔の見た目や特性について情報が載っている。邪神による邪悪化と魔族による邪悪化の違いについても載っている。実は妖魔や妖魔王の背景設定に関する情報は意外と2E版の『R1』『R2』の方が詳しく載っている。
 ラインのタウンガイドは4ページに及び、街にある各施設の案内も載っている(マップとイメージイラスト付き)。ほか、『上級ルール』発売前ということもあり、GMガイドに13ページほど割かれている。NPCとしてシナリオには登場しないルーミス・フェーダがイラスト付きで紹介されているのが特徴(『トラベルガイド』収録)。彼女は”風の旅団”という大規模ギルドのギルドマスターである。
 一方、2E版の『ファーストクエスト+』はタウンガイドが3ページ程度で、『西方ガイド』に準じた書き方になっている。ガイドも施設ごとではなく、エリアごとに書かれている。テキストは旧版『トラベルガイド』のものとほぼ一緒だが、微妙にリファインされている。イラストは書き下ろしとなっている。地味なところではあるが、シナリオ2の依頼人であるレイルズ商会のレイルズにイラストが付いている。また全体的にイラストが変更されている。


『ダブルイメージ』(おすすめ度・中)

 エルーランの首都、ログレスの詳しい設定(7ページ)と、邪神についての情報(4ページ)が載っている。例えばブレーグとミーヴァルがブリガンティアによって封印されたという神話(月の満ち欠けはミーヴァルの呪いである)やトリアラクが死人の沼の奥底で眠っているという伝承があることについて触れられている。七柱の邪神がイラスト付きで掲載されている。
 ログレスについては、『ファーストクエスト』と同様に、4ページのタウンガイドと、3ページのNPCガイド。PCが組織に所属する場合の導入ガイドとして「赤枝の騎士団」「円卓の騎士団」「ベルヴェの護人」「長き腕(ラヴァーダ)」の4つを紹介している。
 『西方ガイド』や『トラベルガイド』と比べて各施設の紹介に力を注いでいるため、他のサプリと比べて重複が少ない。ログレスについては『西方ガイド』『トラベルガイド』『ダブルイメージ』『エスピオナージ』と、資料は豊富である。
 ハンドアウトを使用したシナリオにおけるGMガイドが13ページに渡って紹介されている。


バトルフィールド』(おすすめ度・中)

 コロシアムの街としての、”水の街”クラン=ベルのタウンガイドである。街としての基本情報は『西方ガイド』または『トラベルガイド』の方が詳しい。コロシアムの剣闘士たちを取り巻く世界が良く分かるガイドなので、コロシアムシナリオを作成する場合や、グラディエーターのキャラクターをロールプレイする際の資料に使える。また4ページほど、コロシアムの選手のデータが掲載されている(旧版のデータ)。
 コロシアムでの戦闘シチュエーションデータが大半を占めているが、シナリオも掲載されている(もちろん旧版)。

エルクレスト学園ガイド』(おすすめ度・中)

 エルクレスト学園を舞台にした「学園もの」を遊ぶためのサプリメント。シナリオも付属している。学校行事や寮生活、授業についてのガイドが載っているほか、エルクレスト・カレッジのMAPと寮の部屋の概観図も掲載されている。学園関係者のイラストと設定も掲載されている。ただし、”賢者の街”エルクレストそのものについての解説はほとんどない。
 実習用ダンジョンと称して、ランダムダンジョンの追加データ(旧版)も掲載されているが、実習ダンジョンのシナリオを作る際のフックとして使えるだろう。

リインフォース』(おすすめ度・低)

 立ち位置としては「続・上級ルールブック」である。高レベルサンプルキャラクターや上級サポートクラスが掲載されたサプリメントで、2E時代ではほぼ役に立つ情報が得られない。伝説の「プレイ時間:20時間以上」というシナリオ「封じられた精霊寺院」と、古代竜”鉄の”クマーラが活躍する高レベルシナリオが拝めるので、気になるならどうぞ。
 また2E時代では、ネオ・ダイナストカバル用の一般スキルに一部吸収された、「追加ライフパス」も掲載されている。「目が光る」とか「ゴムのように腕が伸びる」とか「超音痴」といったライフパスである。

『ドレッドダンジョン』(おすすめ度・低)

 ”風の時代”の遺跡を体験できる大型ダンジョンシナリオ集。完全にカジュアルプレイ向けで、「ダンジョンの途中で勝てそうもなかったら撤退して補給する」というプレイングを想定したシナリオとなっている(2Eではそういったシナリオ集は出ていない)。

『エリンディルウォーカー』(おすすめ度・低)

 コロシアムの戦闘シチュエーションと、3本のシナリオが載っている。3本のシナリオはCLが飛び飛びで、一応連作で遊べるような事が書かれているが、基本的に別のシナリオである。ヴァンスターを舞台にした「動く島」、エルーランを舞台にした「一角獣の逆襲」、キルディアを舞台にした「モンスターパニック」である。

『アイテムガイド』(おすすめ度・低)

 表紙のアイテム屋っぽいイラストが雰囲気を出している。2E版『アイテムガイド』とはアイテムのイラストが少し異なる(使い回していない)。マジックアイテムを自作するルールが載っている(←恐らく期待するほどの内容でもない)。
 以下は紹介されている参考作品一覧である。
・武器と防具 西洋編(市川定春、新紀元社
聖剣伝説(佐藤俊之/F.E.A.R.新紀元社
・武器 歴史・形・用法・威力(ダイヤグラムグループ、マール社
・武器屋(Truth In Fantasy編集部、新紀元社
・日本のかたな 鉄のわざと武のこころ(東京国立博物館
・動くポーズ集5 武器編(マール社編集部、マール社
・図解 近接武器(大波篤司、新紀元社
・別冊Gun Part3 世界のGUN大図鑑(国際図版株式会社)
ファイナルファンタジーXIPS2スクウェアエニックス
モンスターハンター2(ドス)(PS2カプコン
ベルセルク三浦健太郎白泉社
スクラップド・プリンセス榊一郎富士見書房
・アイテム・コレクション(安田均グループSNE富士見書房
D&D サプリメント 武器・装備ガイド(エリック・ゲイグル他、ホビージャパン
エクスカリバージョン・ブアマンワーナー・ホーム・ビデオ)
ロード・オブ・ザ・リング三部作(ピーター・ジャクソンポニーキャニオン

『エネミーガイド』(おすすめ度・低)

 ドロップ品合成ルールが載っている(←恐らく期待するほどの内容でもない)。GM向けのガイダンスはほぼ、2E版の『エネミーガイド』や『基本ルールブック』に引き継がれている。エネミーのイラスト集としての価値ぐらいしかない。

『スキルガイド』(おすすめ度・低)

 カラーページに優れたイラストが載っている。冒険者たちがスキルを駆使して戦闘している見開きイラストと、幾つかのスキルをキャラクターたちが実際に使っているコマイラストである。
 精霊魔術、神聖魔術の解説にそれぞれ1ページ分多く割かれているものの、基本的には2E版の『スキルガイド』と変わらない(ただし西方とアルディオンの地域クラスが載っている)。
 
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『アルディオン大陸ガイド』(おすすめ度・高)

 総合ワールドガイド。フェリタニア王国が誕生した頃のアルディオン大陸についての概要が紹介されている。新種族エクスマキナおよびドラゴネットと、新クラスフォーキャスターとプリーチャーが掲載されている。
 「戦争」や「国取り」要素以外にも、アルディオン大陸固有の伝承にも注意が向けられた本文構成になっていて、[伝承](後にレジェンドデータとなる)と[呪詛](2Eでは完全に無くなっている)といった新データが掲載されている。伝承として例えば「異界祭祀書」があるが、これは2E版シナリオ集『ベルリールの鉄巨人』でもデータを変えて再掲されている。一方で[呪詛]は「邪悪化の呪詛」や「誓約強制」「冤罪」「死霊の呪詛」など、様々なシナリオで使うことができる汎用性の高いデータが掲載されている。こうした[呪詛]の解除方法は「物品」「説得」「儀式」「キーワード」「破壊」などが設定できることになっているが、シナリオで決めることになる。例えば「誓約強制」は「ゲッシュを無理矢理結ばせる呪詛」と書かれているが、2Eで追加されたゲッシュと関わりをもたせても面白いかも知れない。
 シナリオ集『ロスベルク島攻防記』へと続くシナリオ「孤島の火種」が載っている。
 参考作品として以下の作品が挙げられている。
スターウォーズ・トリロジー(ジョージ・ルーカス、20世紀フォックス)
風林火山(若泉久朗、NHKエンタープライズ
うたわれるもの(小林智樹、バップ)
ドラゴンボールシリーズ(鳥山明東映アニメーション
ファイナルファンタジータクティクスPSP他、スクウェアエニックス
メタルギアソリッド4PS3コナミ
幻想水滸伝シリーズ(PS他、コナミ
The Elder Scrolls IV:オブリビオンPS3,Xbox360、スパイク)
三国志吉川英治講談社
国盗り物語司馬遼太郎、新潮社)
・裁きの門(マーセデス・ラッキー東京創元社
火の国、風の国物語師走トオル富士見書房
ロードス島戦記水野良角川スニーカー文庫
ファイブスター物語永野護角川書店
海皇紀川原正敏講談社
花の慶次~雲のかなたに~(原哲夫[隆慶一郎麻生未央]、集英社

『サガ・トラベルガイド ベネット見聞録』(おすすめ度・高)

 「ベネット見聞録」というサブタイトルが付いているが、リプレイキャラ”ベネット”の要素はほとんど出てこない。エリンディル版の『トラベルガイド』と同様だが、レイウォールとグラスウェルズという二大王国を中心としたガイドとなっている。『大陸ガイド』とほぼ同時代の内容を扱っているが、少し新しい情報も取り扱っている(グラスウェルズによるメルトランド侵攻)。
 シナリオのネタとして、邪神勢力、バルムンク、竜輝石などが載っている。
 竜輝石にまつわる2本のキャンペーンシナリオ(続きはGMが考えてねってやつ)が掲載されている。
●レイウォール周辺
・ノルドグラム
・ヘクスフォード
・ビルムリオン
●グラスウェルズ周辺
・ベルクシーレ
・ドールセント
・イルシール
●その他の国々と地域
・バーランド
・エル・ウィン・フリット
・ウォリックフォード
・ノルウィッチ
・クリスタ

『タクティクスガイド』(おすすめ度・中)

 フェリタニア=メルトランド連合王国成立後の情勢について解説した『大陸ガイド』の続報的な立ち位置。大規模戦闘ルールと、レジェンドデータ(リファイン+追加)が掲載されている。
 アルディオン各国の軍制が詳しく載っている(第●●部隊など)。『レボリューションガイド』には載っていない軍師・武将系のNPCも掲載されている。CL11の大規模戦闘用シナリオ「チェンバレイの攻防」が掲載されている。


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『東方ガイド』(おすすめ度・中)

 掲載されている情報は、ほぼ『ディスカバリーガイド』と同じである。『ディスカバリーガイド』に載っていない組織やNPCもいるが、基本的に同じ情報を取り扱っている。
 また10本のレジェンドデータが掲載されている。「御紋の印籠」「夜想流忍法帳」「御前大料理大会」「大ハンの血族」などである。
 付属シナリオは、セーリアとタルタル・ハンの中間地帯を舞台にした「明日を取り戻せ」、ダイワを舞台にした「魔族の潜む山」の2本が掲載されている。