lib14's TRPG library

TRPGに関するメモや随想など

FS判定のバランスについて

■FS判定の意義

 FS判定は「ただダイスを振るだけ」「目標値との差分を参照して進行値を出すのが複雑」などと思われがちですが、使いこなすことができれば、戦闘ばかりで単調なシナリオにスパイスを加えたり、ゲームシステムを利用してロールプレイを誘発しドラマチックな展開にもっていったりすることができる便利なツールです。
 非戦闘手段による問題解決をPCに提示したいときや、常に変化し続ける冒険的状況をゲーム的に表現したいときに便利です。またプレイヤーのアイディアで物語が変化し、シナリオで想定していなかった状況へのアドリブ対応にも使えます。

■FS判定の利用目的

 GM、あるいはシナリオ作成者は、FS判定を、どのようなゲーム体験をプレイヤーに与えるものとして位置づけているかを想定しておかなければなりません。以下A~Eは私が想定するFS判定の利用目的です。一つのFS判定が、複数の利用目的に貢献する場合がありますが、優先順位をつけておくことを推奨します(例:まずDありきでBも兼ねる)。
A:PCがそれぞれの得意分野で活躍し、キャラを立たせるため
B:PCどうしが協力しないと解決できない障害を用意し、PC間の絆を際立たせるため
C:判定系のスキルを使用させ、支援キャラ、技能キャラを活躍させるため
D:ゲーム中盤でフェイト、アイテムなどを消耗させ、危機感を出させるため
E:戦闘を複雑で面白いものにするために

■A:ロール演出型(ゲーム的なキャラらしさを描く)

 キャンペーン序盤に位置づけておくのがよい。
 市街地での逃走劇など、物理的な障害と、知力や精神が関係してきそうな障害の両方が出せそうなシチュエーションを用意する。
 参加人数は1人、イベントは進行値3~4ごとに変化するようにし、完了値はPC人数に合わせて14~18程度にしておく。1つ1つの目標値は低めに設定しておくこと。具体的にはCL1~3ならば目標値は8~10ぐらいとする。支援判定に使用する能力値は進行判定と同じにするか、シチュエーションに合ったものにするとよい。
 各判定能力値は【筋力】【敏捷】【知力】【精神】に設定しておくと幅広く使える。
 GMは進行値が上昇した際に、「誰の活躍で何がどうなったのか」をしっかり演出するようにしたい(支援判定含めて)。

■B:ドラマチック型(連携と駆け引き感を演出する)

 FS判定は進行判定(メインで問題解決する)と支援判定(その手伝いをする)によって構成されているという点が重要である。FS判定ではイベントごとに能力値が変化したり、「行動済のため動けない人」が存在したりするため、「誰がメインをやるか」「サポートは誰がどのようにやるか」について頻繁に作戦会議を開く必要が生じる。戦闘では「いつもの役割分担」で済んでいたギルドメンバーが、改めて連携を取らされることで、ギルドメンバーの違った一面を見ることができるチャンスである。
 参加人数は2~3人とし、支援判定は進行判定とは別の能力値にするか、「うまくシチュエーションに合った演出ができれば、好きな能力値で判定していいですよ」とプレイヤーに伝えるとよい。イベントは頻繁に変わる方が望ましいため、3ごとに変化するように設定する(目標値が高い場合は2ごと)。能力値は多様であることが望ましいが、無理にバランスを取る必要もない。全ての状況下で支援に回るキャラクターがいても構わない。重要なのは進行判定の能力値がシチュエーションに合致していることと、支援判定の演出がしやすいように時間や場所などの場面設定がしっかり伝わることだ。
戦略性を出すため、次のイベントに関する情報、どの能力値の判定がきそうなのかを推測できるような描写を入れることで、プレイヤーに「駆け引きっぽい」プレイング体験を与えることができる。この描写は「引っかけ」を抜きにして、素直である方が望ましい。誰が先に判定するか、誰がフェイトを突っ込むか、誰が支援に回るのか、そして支援判定のためにどんな演出(ロールプレイ)をするのかについて、あれこれと考えてもらいたいからだ。不確定要素があまりにも多すぎると、プレイヤーは考えることを放棄してしまい、ただダイスを振らされるだけの作業になってしまう。

■C:技能判定型(折角取ったスキルを活躍させる)

 このタイプの目的のためにFS判定の場面を用意しようと考えているGMは、まず技能系一般スキルについて一通り把握しておかなければならない。技能系一般スキルとは、特定のシチュエーションにのみ使える一般スキルを指す。
●筋力《アスレチック》《ウォータースイム*》●器用《リムーブトラップ》●知力《アイデンティファイ》《モンスターロア》《アルケミーノウリッジ》《ヒストリー》《ミュトスノウリッジ》《マジックノウリッジ》《アストラルノウリッジ》《ロイヤルノウリッジ》●感知《ファインドトラップ》《リサーチ》《サーチリスク》《ビジランテ》《トラッキング》●精神《オピニオン》《ブラフ》《インサイト》(*印は該当能力値以外でも使用できる可能性あり)
これら技能系一般スキルの他にも、アイテム、あるいはある判定を強制的に別の能力値に変更してしまうスキル、《ブレッシング》《ダンシングヒーロー》《マドリガーレ》など、非戦闘時の判定にも効果を発揮する汎用的な達成値上昇スキルも役に立つ。
ともかく、FS判定において[トラップ解除]や[アイテム鑑定]を要求してはいけないルールはない。「薪割り」と称して、「種別:斧」の武器を使用した命中判定と言うことだって可能だ。「交渉のための【精神】判定」と言えば《オピニオン》の活躍の場と言えし、ロールプレイ次第では《ブラフ》が使えるかも知れない。具体的なスキルを思い浮かべながらシチュエーションを考えていくというわけだ。
ちなみに、このテクニックはFSでなくとも、通常の判定の場面でも応用ができる。例えばダンジョンの部屋の中で「鍵」を探すようば場合、[情報収集]として扱うように宣言しておけば、シティアドベンチャー用に取得した《リサーチ》が無駄にならずに済むし、事前に噂話として聞いていたことにして《ストリートワイズ》や《グレープバイン》を活躍させることもできる。
ルーリングの基本的な考え方としては、なるべく拡大解釈を許容すること。《マジックノウリッジ》が適用されるようなシチュエーションで、《ミュトスノウリッジ》が適用されてもおかしくないような場合、《ミュトスノウリッジ》も適用されることにしておくのがよい。合言葉は「もう単なるフレーバーとは言わせない」である。

■D:リソース削り型(危機感の演出)

 リソース削り型は、名前に反して、プレイヤー心理を突いた文系っぽいシナリオ設計が要求される。
 ここではFS判定に失敗したらどうなってしまうのかを明確にしておくことが重要である。初心者向けのシチュエーションとしては「ボスが強くなる」「モブが5体追加される」といった分かりやすいものを推奨するが、なるべくなら「武器を敵に奪われる」「ヒロインがエネミーとして参戦する」「キャンペーンでお世話になったNPC一人がランダムで妖魔化する」といった具合に、なるべくえげつないペナルティを用意しておくとよい。そうしておくことにより、プレイヤーは、少しばかり目標値が低くても、本気でフェイトをつぎ込んでくれるはずである。事前にヒロインとの交流シーンを丁寧に描いたり、マスターシーンを挿入したりして、なるべくプレイヤーに感情移入させるように工夫したいところだ。
 さて、リソース削り型のFS判定において、最も簡単にリソースをつぎ込んで貰える方法は目標値を高く設定しておくことだが、あまりオススメしない。戦闘では、ダイス目が悪いことによるエラーHPやMPといったリソースの消耗で吸収してくれるが、FS判定におけるエラーは残りラウンド数に直結する。基本的に『AR2E』はリソースの消費によってエラーを回避し、リソースの消費によってドラマを”購入”するゲームだ。理不尽に目標値が高い判定によってドラマが決定してしまうのは、『AR2E』の基本的な文法から逸脱してしまう。そしてそういう状況に不慣れなプレイヤーから絶望感が漂い、良いプレイ体験が得られない可能性が高い。確かに終了条件を設定せず、ラウンド更新ごとにHPロスを受けるというルールを設定すれば戦闘と同じよう処理できるが、もはや戦闘でよい。それよりも数学的に成功する確率が高い状況下で、えげつないペナルティを提示した方が盛り上がるし、エラーも発生しにくい。また、エラーに対する納得度も高いと思われる。
 実はD型は危機感とは逆の方向でリソースを削らせることもできる。すなわち追加報酬である。「FS判定に失敗すれば何も起きないが、成功すればアイテムがもらえる」と言われれば、挑戦してみたくなるのがプレイヤー心理というものだろう。彼らが消費可能な範囲内ならば高い目標値、あるいは高い完了値を設定してリソースを削りまくっても許されるだろう。しかし報酬はプレイヤーの納得のゆくものでなければならない。最も簡単にプレイヤーを納得させる方法は、FS判定をする前に、報酬が何なのかを教えてしまうことだ。それでは興が冷めてしまうというのなら、それが何なのか想像がつくように仄めかすことだ。ただし、このやり方はリソースを削りつつ、別のリソースを与えることに他ならない。狡猾なプレイヤーは誘いに乗らないこともある。それゆえに「挑戦すること自体がワクワクするような体験である」と思わせる仕掛けがあるとよい。多少は不利な挑戦であっても、プレイヤーはロマンに対価を払ってくれるだろう。

■E:戦闘複合型(戦闘の勝利条件としてのFS判定)

 『神曲奏界ポリフォニカRPG』に「ショート・グッドバイ」というシナリオがある。FS判定が初めて搭載されたシナリオである。このシナリオのクライマックスフェイズでは、意固地になった元契約精霊がPCたちに戦いを仕掛けてくるのだが、PCは戦闘で彼女を倒してもいいし、FS判定で彼女を説得してもいいという仕掛けになっている。
 FS判定は説得や装置の破壊など、「敵の全滅」以外の勝利条件をもたらしてくれる。特に妨害者と交戦しつつ行うFS判定は、「敵をどこまで倒すか」「進行判定は誰が行うか」といった戦略性を出しつつ、従来の戦闘用のスキルと、判定用スキルの両方を活躍させることができる。
 全般的に戦闘中のFS判定では、戦闘行為にメインプロセスを取られてしまうため、支援判定が起きにくい(支援判定を重視するB型とは相性が悪い)。このため、各進行判定の目標値を低くしておくか、完了値を低くしておくことを推奨する。
 ここで、戦闘におけるFS判定の位置づけについて幾つか分類しておく。

●FS判定に成功することが勝利条件

 例えば妨害者がいる中で「粛正装置を止める」など。目標値や完了値がある程度高めでも構わない。

●FS判定に成功することが事実上の勝利条件

 エネミーを全滅させてもいいし、FS判定に成功してもいいと言いつつ、エネミーが「シナリオ1回」級の強いスキルをラウンド1回使ってくるなど、事実上、FS判定の成功しなければならない場合(《インタラプト》や《蘇生》で切り抜けられるラウンド数が事実上のリミットとなる)。プレイヤーは敵の戦力について理解する必要があるという点で、上記よりも複雑さは増すため、目標値や完了値を高くする必要はない。

●FS判定に成功することが勝利条件の一部

 「魔族の真の死を与えるための条件を満たす」→「敵の魔族を倒す」のように、FS判定に成功することが、戦闘で勝利するための前提条件となっている場合。どちらを先に解決しなければならないかとう駆け引きが発生しないため、A型やC型と組み合わせやすい。

●FS判定に成功することが勝利条件の選択肢

 例えば「魔女パンドゥーラを倒す」か「結界を破って姫を助ける」かをプレイヤーの意思で決めることができ、ギルドメンバーの能力のバランスによってどちらが有利になるのかが変わるような場合。

●FS判定に成功することで戦闘で有利になる

 戦闘に対して完全に従属的な立ち位置となる。例えば魔法防御力を+30する装具を身に付けた敵から、装具を引き離すために【筋力】や【敏捷】を中心とするFS判定を要求するような場合、プレイヤー陣は、前衛のウォーリアやシーフが「物理攻撃で殴る」か「メイジのためにFS判定に成功する」かを相談しなければならない状況になる。特に完了値を低めに設定しておくとよい。

■目標値と完了値

 目標値は高すぎるとエラー(事故)が起きやすいので、低めに設定しておくことをオススメします。ただし、完了値を低めに設定しておけば、目標値を高くしても構いません。進行値はあまり増えないけれど、ゴールには近づくという状況が再現できます。進行判定でクリティカルが出たときや、判定ブースト系のスキルを使いまくったときに猛威を振るいます。
 一方で目標値を低く設定し、完了値の方を上げておくと、支援判定の意味が薄くなり、判定ブースト系のスキルの意味も薄くなります。逆にGMにとっては、安定して各イベントの演出ができ、FS判定を使って物語の進行を演出しやすくなります。

■計算式っぽいもの

期待値=13+(CL÷3)+(CL÷5)
修正=(PC人数-参加人数)÷2
難易度={易しい=期待値-3}{普通=期待値-1}{厳しい=期待値+1}+修正
上昇値={易しい=3}{普通=2}{厳しい=1}
完了値=上昇値×参加人数×終了ラウンド数

この計算式っぽいものを何となくの基準にして、FS判定の利用目的に合わせて微調整します。

アリアンロッド2E』の戦略論

ガチ勢には不要と思われますが、初心者やエンジョイ勢にとって、無駄な長考をスポイルする意味でも、押さえておきたい考え方があるので、紹介しておこうと思います。

何のための戦略

 PCが死んだり、全滅したりするのは嫌だと誰もが思うはずです。ロールプレイ重視と言えど、PCが死んでしまってはロールプレイもできなくなります。そして、できれば感情移入しているNPCの為に依頼を達成してあげたいところです。そういうわけで「ミッションを達成するにはどうすればよいか」というテーマについて「より楽しむコツ」と「より効率的に遂行するコツ」を紹介します。よくゲームの攻略本の冒頭に書かれている「基本戦術」みたいな内容です。

ミッションについて知る

 『AR2E』の勝利条件は原則としてクライマックスフェイズまで生き延び、ボスを倒すことです*1

見通しをもつ

 『AR2E』非戦闘シーンが3~7*2、戦闘シーンが2~4程度あります。この5~11シーンが『AR2E』の1シナリオの長さです。例外はありますが、目安としてこのくらいです。プレイヤーは今回予告、ハンドアウト、オープニングなどで描写された「気がかりワード*3」をチェックし、未だ解決していない事柄があった場合「まだクライマックスじゃないかも?」と判断することができます。逆にほぼ全ての謎が解き明かされている場合「もうすぐクライマックスかな?」と判断できます。
 『AR2E』は資源管理ゲームです。特に「1シナリオにn回使用可能」と書かれているスキルやアイテム、ギルドサポートを何時使用するべきかを判断したり、HPやMPをどの程度まで回復させるべきかを考えることが重要になってくるので(ポーションをどの程度買っておくべきか)、シーン数・戦闘回数に関する見通しは重要になります*4

資源:使用回数

 『AR2E』は回数制スキルを敵にぶつけて楽しむゲームです。例えば《ボルテクスアタック》や《マジックフォージ》などを使って敵に与えるダメージを過度に上げたり、逆に敵の攻撃を防いだり、重要な情報を獲得したりします。これは「1つのカードが特別な意味を持ち、局面をひっくり返す」トレーディングカードゲームの楽しみに近い性質をもっています*5
 こうした必殺技は、ボスのために取っておくことが基本的な戦略でしょう。ただし例外的なケースもあります。いずれにせよ、使うチャンスが訪れるたびに「今使う」のか「後のために取っておく」のかを判断しなければいけません。「後のために取っておく」ことを選択する場合は、「後に使わなければならない状況」をちゃんと想定するべきです。また「今使う」ことを選択する場合は、「なぜ今必要なのか」という理由があったほうが望ましいです。このとき肝に銘じて欲しいのが、「使わなければ損」という価値観です。後で使うあてがなければ、先に使った方が賢明なのです。「なるべく使わずに勝てた方がかっこいい」という縛りプレイは仲間にとっては迷惑です。
 ぎなみにフェイトも使用回数系の資源に含まれます。ギルドサポート以外に回復手段がないため、使用回数とほぼ同義です。

資源:MP

 MPは汎用性の高いリソースです。『AR2E』のアコライトは《ヒール》というスキルを覚えるので、シナリオ単位で管理しなければならないリソースはMPだけです(HPはシーンを跨いで管理する必要が殆どない)*6
 MPポーション*7は多く持っていても損はありません。CL1~2帯ではポーション類は高級品ですが、レベルが上がると(特にギルドが《目利き》戦略に走ると)ポーションが安価になります。資金も少なく、最大MPも低い低レベル帯では、MP消費の低いスキルに価値がありますが、高レベルになってくるとMP消費の低いスキルの価値は相対的に低くなっていきます。MPは多くのスキルに共通して有効なリソースです。そのMPを回復させるMPポーションは必須アイテムというわけです。様々な目的に利用できる資源は強力な資源である、というのは資源管理ゲームの定石です。

資源:HP

 HPは短期的な管理をします。特にCL3以降は、シーン終了時に最大値まで回復できるくらいにMP資源が充実してくるので、短期管理の傾向が強まります。

攻撃は最大の防御なり

 話を分かりやすくするため、防御力などの概念を除き、単純化して考えてみます(攻撃は必ず命中するものとして考えます)。
 例えばゴブリンが【HP10】【攻撃力5】だとします。そして前衛のウォーリアが【HP30】【攻撃力5】だとします。このとき、ゴブリンが3体同時に襲ってきたとしたら、前衛のウォーリアは勝てるでしょうか? 勝てませんね。では、ウォーリアが先制攻撃できるものとして、何ラウンド目に戦闘不能になるでしょうか?*8


 そして、ここからが実践の話ですが、このとき後衛にメイジがいるとします。メイジは【攻撃力5】です。
 では、メイジもゴブリンに先制できるものとして、ウォーリアは生き残れるでしょうか? メイジは後衛なので攻撃の対象にはならないものとします。*9


 それでは条件設定を少し変えてみます。ウォーリアとメイジがゴブリンに先制できないものとすると、どうなるでしょうか?*10


 ここまで考えてもらえば、敵よりも先に行動するという事がいかに重要か分かるかと思います。先に敵を倒しておけば、味方が受けるダメージが減るからです。同じ敵を執拗に攻撃し続けることは卑怯な手ではありません、生き残るために必要な戦略なのです。攻撃は最大の防御なり。火力は集中せよ。これが、鉄則です。駒を減らすと脅威は減るのです。

HP管理と回復

 先ほどの「攻撃は最大の防御なり」で使った例をもう一度使ってみましょう。
  >>ゴブリン【HP10】【攻撃力5】【行動値1】 ×3体
  >>ウォーリア【HP30】【攻撃力5】【行動値0】
  >>メイジ【後衛】【攻撃力5】【行動値0】
 このパラメータは先ほど確認した通りです。このままでは負けてしまいます。そこでアコライトに登場してもらいます。
  >>アコライト【後衛】【回復力10】【行動値0】
 こんな感じの支援特化のアコライトですね。ただしアコライトは回復するたびに、メイジは攻撃するたびにMPポーション1本分のMPを消費します。最も効率よく戦った場合、戦闘終了直後、MPポーションは何本使ったことになるでしょうか?*11


 着目して欲しいのは敵の合計攻撃力と、味方の回復力の差です。味方の回復力よりも敵の合計攻撃力が上回っている場合、毎ラウンド、ダメージが蓄積される計算になります。こうなるとジリ貧です。なので、敵の合計攻撃力を減らす=敵の数を減らすという戦術が有効になります。味方の回復が追いつかないうちは、残りHPが許す限り、全力で敵を攻撃した方が無駄は少なくなります*12
 安全に戦うには、最大HPを上げ、1ラウンドあたりの回復力を高めることが必要です。防御力を上げるよりも確実です(貫通ダメージにも耐えられるから)。その上で、敵の手数が多い場合は防御力や《プロテクション》の有用度が増すことになるでしょう。単独で強力な敵を相手にする場合は最大HPと回復力がモノを言います。このように戦う相手の構成によってダメージ軽減手段が有効な場合と、HPと回復力が有効な場合があるのです。大事なのは「どちらも強くする」ことではなく「自分の弱点を把握し(仲間を頼ることを含めて)何らかの対抗策を想定しておく」ことです。

ダメージとカバーリング

 ダメージは最も防御力の高い者が受けた方がお得です。要するにウォーリアは【筋力】を上げて、高級防具を揃えて《カバーリング》を取りなさいという話です。基本的にダメージというのは受けたくないものなので、回避したいと考えるのが通常の心理かと思います。しかし『AR2E』は回避を向上させる要素よりも命中を向上させる要素の圧倒的に多いゲームで、敵の攻撃もヒットしやすいのがセオリーです。回避特化のシーフを除き、基本的に攻撃は受けるもの、という覚悟がまず必要です。
 その上で、受けるダメージを最小限に食い止めるには、防御力が高い人がダメージを受けるしかありません。ゲームの構造上、防御力の高い防具が装備できるのはウォーリア>アコライト>シーフ>メイジとなっています。ウォーリアが《カバーリング》を取得できるのは理に適っているわけです。場合によってアコライトが副次的にその役割を担うこともあり得るでしょう。積極的にダメージを受け、後で回復するという役割もあるということを覚えておいて下さい。ウォーリアはダメージを受けてナンボです。
 特に防御力に特化したウォーリアは防御力と味方の《プロテクション》でほぼ全てのダメージを相殺してしまうでしょう。たとえ大ダメージを受けたとしても、防御力の分は無駄になりません。ただし魔法ダメージや貫通ダメージには弱いので、HP最大値や回復手段などの対抗策は必要になるでしょう。

回避とバッドステータス

 一方で、シーフは《バタフライダンス》や《ドッジムーブ》などを覚え、回避に特化できます。白兵タイプのエネミーがいるエンゲージに突っ込み、[スリップ]もしくは[威圧]を与えるシーフは嫌らしいトリックスターです*13。あるいは[逆上]を与えて回避の高い自身を攻撃の標的にします。
 回避型シーフの特徴は、命中が極端に高いエネミーからダメージを受けるリスクを抱えつつも、命中がそこそこしかないエネミーの攻撃は全て事実上無効化できる点です。魔法ダメージや貫通ダメージであっても関係なく、ダメージをなかったことにできるのが強みです。ただし万が一攻撃が当たってしまった時のリスク対策はとっておくことが望ましいでしょう。
 回避中心のキャラクターは、バッドステータスと組み合わせることで、味方を守る力になります。単体で回避が高くても、自身の生存率を高めるだけで、味方の勝利には貢献しません。それこそ無駄になってしまいます。

移動と位置取り

 ウォーリア、シーフ、武器攻撃型アコライトに共通するのが位置取りの重要性です。ウォーリアは高い筋力を活かして、シーフは《ランナップ》などのスキルを活用して、敵と同じエンゲージに入ります。移動力が非常に高い場合、目の前の敵を迂回して遠くの敵に肉迫することもできるでしょう。
 特に相手が白兵攻撃タイプの場合、足止めの役割を果たせます。相手の攻撃を自分に惹き付けることで、先ほど挙げた「ダメージを受ける役割」や「攻撃を回避する役割」が効率的に担えます。HPや防御力が低く、回避もあまり高くない脆弱なメイジに敵を近づけさせないのは、前衛の重要な役割です。そのため移動力や行動値、あるいはギルドサポートの《陣形》は非常に重要です。

攻撃とダメージ種別

 ダメージには3種類あります。物理ダメージ、魔法ダメージ、貫通ダメージです。貫通ダメージが最も良い手段で、次に魔法ダメージ、一番非効率的なのが物理ダメージです。ルールブックのエネミーのデータを眺めれば分かることですが、物理防御力の方が高いエネミーの方が圧倒的に多い(ほとんどと言っていい)のです。ゴーレムたちに至っては魔法防御力が0です。ゆえに、武器攻撃のダメージを魔法ダメージに変更するスキルやアイテムが猛威を振るいます。
 例えばメイジの《エンチャントウェポン》は武器攻撃のダメージを魔法ダメージに変更するスキルです。敵がゴブリンの場合、防御が5/3なので、「ダメージに+2する」という効果と同義になります。大して強くないですよね。でも敵がアイアンゴーレムの場合、防御が20/0なので、「ダメージに+20する」という効果と同義になります。《ホーリーウェポン》をSL5まで育てても、そこまで強くはなりません。圧倒的に強いわけです*14。他にもダメージを魔法ダメージ化、貫通ダメージ化するスキルがあるので、意外と良い選択肢になるはずです。

アイテムについての小ネタ

  • ダンジョンに行くときは、街で補給できないので、ポーションは多めに買っておくべし。
  • 重量さえ許せば毒消しは買っておくべし。
  • 交渉が重要そうなシナリオには「強心丹」を用意せよ。
  • トラップ解除担当者は「小型ハンマー」「小道具入れ」「くさび(複数)」を買っておくべし。
  • 冒険者セットの「火打ち石」「ロープ」「ランタン」は「小道具入れ」に入れて重量を節約すべし。

ビルド論:スキルは何を取るべきか

 初心者にありがちな失敗の多くはスキル取得の際に起きます。面白そうなスキル、どれも重要そうに見えてきます。実際のセッションではエネミーによって理不尽な状況が突きつけられるため、様々な状況に対応できるキャラクターにしようと考えがちです。けれど、正解は「ある程度の状況に対応できる、コンセプトを持ったキャラクター」を作成することです。特化というと言い過ぎになりますが、具体的な活躍ポイントを想定して、計画的にスキルを取得するのが無駄のないやり方です。例えば「ボスに対して大ダメージを与える」だとか「敵の物理ダメージを全部引き受けて味方を守る」だとか、何らかのコンセプトが求められます。そしてコンセプトに合致したスキルを優先的に取らなければなりません。

【無駄その1:タイミングが被る】
 セットアッププロセス、メジャーアクション、マイナーアクション、ムーブアクション、ダメージロール直前(直後)のスキルは1タイミングにつき1~2つまでにして下さい。『AR2E』は固定値積み上げ型のデータ構成をとっているゲームなので、「状況に応じて使い分ける」という戦略をとるよりも「特定の役割に特化して道を極める」方が有効なのです*15。ゲーマーよろしく状況を読んで色々判断するよりも、「私のPCは~~するキャラクターだ!」というキャライメージを皆に印象づける方向に向かっていくようなゲームデザインになっています。
 そういうわけで、なるべく「パッシブ」のスキルを取ったり、同じスキルのSLを上昇させた方が効率的なようにできています。

【無駄その2:役割が被る】
 仲間と同じ仕事はなるべくしないようにします。例えばトラップが不安だからといってPC全員が《ファインドトラップ》を取得するのは無意味です。また仲間と同じバッドステータスを与えるスキルを取得するのも無駄になる事が多いでしょう。

【無駄その3:弱いスキルを敢えて取る】
 命中判定のダイスを+1Dする《アームズマスタリー》があるにも関わらず、それよりも先に命中判定に+2する《ウェポンルーラー》を取得するような愚行は避けるべきです*16。「どのキャラも《アームズマスタリー》を取るのは面白くない」「たまには《ウェポンルーラー》を使うキャラがいてもいいじゃないか」という考えは確かに一理あるけれど、明らかに愚かな選択でしょう。《プロテクション》ばかりでは詰まらないから《サモン・アラクネ》を取るのとは訳が違うのです*17。その理屈を通してしまえば「皆回復アイテムを持ってダンジョンに行くのは詰まらないから俺は何も持たずに行くぜ」という理論が通ってしまいます。そんな仲間に背中は預けられません。どう考えても強いスキルを取るのは冒険者の常識だと覚えておいてください。

【無駄その4:シナジーを無視する】
 自分のPCが弓使いで、射撃攻撃をするキャラクターなのに、「白兵攻撃に+[SL×3]」みたいな効果を持つスキルを取得するのは無駄です。同様に《アームズマスタリー:短剣》を持つキャラクターが新しい武器として斧を持つのも無駄が多いです。「タイミング:《カバーリング》」と書かれている《カバームーブ》を、《カバーリング》を取得していないキャラクターが取得するのも無駄です。……はい、当たり前ですよね。失礼しました。ですが、こういう場合はどうでしょうか?
 アコライトが《マジックブラスト》を取得している場合の話です。長剣ウォーリアと、短剣シーフ、魔術攻撃メイジが味方にいるとき、アコライトは武器攻撃を強化する《ホーリーウェポン》を取得するか魔術攻撃を強化する《ホーリーワード》を取得するか悩んでいます。この場合、複数の味方を対象にできるため《ホーリーウェポン》の方がお得です。でも、アコライト自身が魔術攻撃をする人ならば《ホーリーワード》の方が魅力的でしょう*18
 また逆に考えるとシナジーを有効活用すると強力になります。「ラウンド終了までダメージに+4。」と「メインプロセス終了までダメージに+6。ラウンド1回。」と書かれているスキルがあったとします。後者の方が与えるダメージは大きいので、普通は強いですよね。ですが、ラウンド中の行動回数を増やす《ジョイフルジョイフル》などのスキルと組み合わせたとき、前者の方が強くなります。攻撃回数が2回になり、合計でダメージが+8になるからです。

学習論:ゲーム構造に気づく

 【感知】と【幸運】は戦闘であまり役に立たない能力値です。それゆえに、多くの冒険者たちが磨くことを疎かにしています。トラップと情報収集はその意表を突いた不意討ちになります*19。PCの得意な所を突いた仕掛けはPCの「無双演出」を誘発するイベントであり、PCの苦手な所を突いた仕掛けはPCの「ピンチ演出」を誘発するイベントである。「無双演出」においては、徹底的に格好つけたロールプレイをした方が盛り上がるし、「ピンチ演出」においては、悔しがるロールプレイをした方が盛り上がります。自分の長所と弱点を把握しておくことで、物語にもメリハリが生まれます。仲間のピンチを救うために【感知】を上げていたシーフは、さらりとトラップを見つけ出すのです。

学習論:戦略をいかに楽しむか

 「たかがゲームで、そこまで考えなくてもいいじゃないか」と思う人と、勝利や最適化に拘る人との間には差があります。戦略を楽しむ価値を求めているかどうかです。戦略そのものは、数学や経済学を勉強すれば身に付くかも知れませんが、戦略の楽しさ・価値は戦略を楽しむ良い環境に身を置かなければ身に付きません。リプレイなら、まぁそこそこ。良いプレイヤーと遊ぶのが近道です。
 行動の選択に正解があると思っている人は戦略を楽しむのには向いていないと思います*20。だから「失敗をしたらどうしよう」という考えを捨てて*21「私は~~という理由で○○するのが正しいと思った」という考えをもつようにすることが重要です。そしてその通りに行動宣言するのです。失敗した場合、読みがマズかったから失敗したのか、単に確率の問題で失敗しただけなのか、GMとの意思疎通がうまくいかなかったことが原因なのかがはっきり分かり、次に繋がります。ただ漫然と思いついた事をやるだけでは、プレイにメリハリがなくなり、戦略の楽しみが味わえなくなります。失敗したくないのならGMにお願いして手加減をしてもらえばいいわけです。私は、最大限努力した結果として敗北するのは恥ではないと思います。もしそこから教訓が得られるのなら価値のある敗北です。思いっきり悔しがった方が盛り上がります。「GM、リベンジ下さい!」と要求しましょう。

*1:FS判定に成功しつつボスを倒すとか、ボスの攻撃を受けながらFS判定に成功するとか、ヒロインを守りつつボスを倒すとか、そういう追加条件が加わることもあります。また勿論、勝利条件はGMが(シナリオ作者が)勝手に決められます。そういう意味では「英雄として演説して人々を感動させる」みたいなミッションも設定可能なのですが、考慮の対象にする価値がありません。

*2:オープニングとエンディングなど、演出のみのシーンは除外しています。

*3:いわゆる謎。GMが敢えて描写していることがメタで理解できる事柄。敵の正体、敵の目的、攫われた人々の行方、事件に絡んでいるであろう人物など、真面目なプレイヤーがレコードシートのメモ欄に書き写しているキーワードのこと。

*4:ついでに言うと、シナリオの長さを見通しておくことで、ロールプレイの見通しも立ちやすくなります。

*5:とても残念なことに、特別な意味をもつカードを持っているのはエネミーも同じです。彼らは実に卑怯なオリジナルスキルを持ち、PCたちに絶望と恐怖を与えてきます。そういうわけで、一発逆転カードはPCたちも取得せざるを得なくなります。「必殺技はないけれど強力な通常攻撃で地味に戦いたい」と思っていても、そういうわけにはいきません。CL3以上の冒険者は英雄の世界に足を踏み入れることになります。

*6:アコライトのMPを消費して《ヒール》を使用することで、皆のHPが回復するからです。この処理はダンジョンの部屋の処理が終わるたびに可能なため、シナリオ上の特殊な処理がない限り、HPポーションは戦闘中の緊急時以外は不必要になります。

*7:ハイMPポーションや野菜を含む

*8:正解は、2ラウンド目です。

*9:正解は、3ラウンド目に敵を全滅させて生き残れます。

*10:正解は、3ラウンド目にウォーリアが戦闘不能になります。そして4ラウンド目にゴブリンがメイジのいる地点まで移動されればPC側は敗北し、移動できなければメイジがゴブリンに止めを刺せる結果となります。

*11:正解は3本。回復に1、魔法に2、もしくは回復に2、魔法に1という割り当てになるはず。

*12:ダメージを増やすタイプのリソースは先に使っておいた方が味方の被害を少なくするチャンスに繋がります。

*13:バッドステータスのせいで結果的に離脱ができないため目の前にいるシーフを殴るしかありません。そしてその攻撃は当たりません。可哀想にエネミーどもはシーフに翻弄されるのです。

*14:通常、物防と魔防の差を知ることはできませんが、セージの《トゥルースサイト》を使えば分かります。つまり《トゥルースサイト》と《エンチャントウェポン》はシナジーを生むということです。

*15:《インビジブルアタック》と《スマッシュ》はどちらも「タイミング:マイナーアクション」です。使わなくなったもう片方のスキルは死蔵資産になってしまいます。死蔵資産は「スキル枠」という機会費用を支払って手に入れていますから、間違いなく無駄です。「スキル枠」を別のスキルに投資した方が有益です。例えば《インビジブルアタック》ぶんのスキル枠をパッシブの《ウェポンルーラー》に投資すれば、命中+2は常に確保されるわけです。確かに《インビジブルアタック》よりも命中精度は下がりますが、《スマッシュ》が死にスキルにならないという点でお得です。

*16:1Dの期待値は3.5で、2よりも大きい。そのうえ、判定のダイスが増えればクリティカル率が上がり、ファンブル率が下がるのです。

*17:《プロテクション》の方がコストが安く、使い勝手がよいが、《サモン・アラクネ》は範囲(選択)でダメージ軽減ができるため、それぞれ長所と短所があります。また《アームズマスタリー》を取らずに《カバーリング》取るのは、おかしくない選択でしょう。どちらの選択も筋が通っています。どちらが正しいかは結果論でしかありません。

*18:前衛はそれぞれエンゲージを分けることが多いため。

*19:魔術系のトラップは【幸運】判定を求めるものも多い。

*20:「正解」を押しつけてくるベテランと一緒に遊ぶというのは、貧しいプレイング環境です。

*21:その背景には仲間への「遠慮」が見え隠れしています。なら「私は~~という理由で○○したいけどいい?」と相談すればよいのです。その時、待ったをかけなかった仲間は結果に対して責任を負うことになるからです。相談というテクニックは重要です。失敗を「私のせい」から「皆のせい」にすることができるからです。そうやって仲間は本当の意味で仲間になっていきます。

りゅうたま シナリオ

イーハトーブの輝く丘に


丘の上に大きな椅子と小さな椅子。
コネコゴブリンの親子が西の空に沈む太陽を見ている。
「父ちゃん、沈んだ太陽はどこへ消えていくの?」
眩しそうに目を細めながら、西に向かって右手を突き出す。
立派な髭をたくわえたコネコゴブリンがピンと指を立てて答える。
「仕事が終わった太陽は、退職金をもらって悠々自適に旅に出るのさ」
それを聞いた子どもコネコゴブリンは、椅子に座ったまま、小首を傾げた。
「旅に出た太陽は星を巡り、やがて光は弱くなってしまう」
「弱くなったら、どうなっちゃうの?」
「年を取ってしまったから、もうじき死んじゃう!」
「ええ! 死んじゃうの!?」
「でも、死ぬときは故郷に帰りたいから、大急ぎで帰ってくるのさ」
「そうだね、大急ぎで帰らないと」
「それが、流れ星さ」
その時、東の空が光った。
「あ、流れ星。父ちゃん、流れ星だよ!」
「うん、あれはきっと5年前の太陽だな」
「今の流れ星、どこを旅してきたんだろう」
「さてね? なにせ、空は広いから……」*1




■旅行シナリオ

名前:星降る丘
風景:満天の星空
特徴:本当に星が降ってくる
動機:”月明かりの都”ユールーナへの道中
出発:乱れ雨の草原、ホタルの飛び交う川辺
難関:星降る丘
季節:夏
竜人:緑竜を推奨

■プレイヤー向け情報

 【レギュレーション】
 PCは初期作成
 ”月明かりの都”ユールーナに向かっているという設定
 【シナリオの方向性】
 旅情系シナリオ(景色や人との出会いを楽しむ)
 【導入】
 世界で一番西にある都ユールーナ。
 人間とコネコゴブリンが仲良く暮らす月明かりの都。
 あなた達はユールーナに向かう旅の最中です。
 どうやら、星降る丘という場所を通らなければならないようです。
 【状況】
 買い物のタイミングはあります。お金を余らせておいても大丈夫です。

■シナリオ構成

OP:乱れ雨の草原にいるパーティ。連日雨だったのが晴れ、夏の日差し。コンディション・チェック
A1:パーティは日差しの照りつける草原を移動する。草原+暑い。移動チェック(7)、方向チェック(7)
TP:小川の橋の近くで野営をしている旅人のパーティと出くわす(野営チェック免除)。
 褐色のミンストレル、サラディ。巨漢のクラフト、ビーゴ。コネコゴブリンのマーチャント、クロ。
 ホタルの飛び交う川辺で、彼らと交流する。
 彼らから星降る丘についての情報を得る。〈伝承知識〉〈教養知識〉可能。
 クロと取引ができる。基本的に色々なものを取引できる。
A2:川が流れる一帯に出る。周囲に靄がかかり、小雨も降る。草原+雨+霧
 コンディション・チェック→移動チェック(8)→方向チェック(8)
TP:野営チェック(8)後、食べ物の臭いにつられてモブ・ビースト(P132)が1d6体やって来る。
 狩猟中のハンターはモブ・ビーストの痕跡(足跡や糞など)を見つける。
 戦闘以外の手段でモブ・ビーストを追い払うことも可能とする。その辺はGMのセンスに任せる。
A3:丘+曇りになる。
 コンディション・チェック、移動チェック(8)、方向チェック(8)、野営チェック(8)
 もしここで移動チェックに失敗すると、ハプニングとして変な形の岩で転ぶ*2。【大ケガ:8】を受ける。
CX:夜、テントの傍で大きな音がする。
 様子を見に行くと、地面に穴が空いている。
 「やあ、僕の名前はひこ星。今から彼女と1年に1度のデートなんだ。」
 一見すると普通の人間のように見えるが、顔が光り輝いているため、一目で彼が星だと分かる。
 「彼女へのプレゼントをこの星に落としてしまってね。一緒に探してくれないか。」
 「今夜中に見つけないと間に合わないんだ。」
 基本的には地形を目標とする[敏捷+知力]のチェックをする。
 失敗すると流れ星にぶつかって1d4のダメージ(防護点無視)を受ける。
 だいたい夜の21:00ぐらいからスタートして、1回のチェックに1時間を費やす。
 成功したなら「ひこ星の報酬表」を振る。
ED:天候が「晴れ」になる。
 「ここでお別れだね、ありがとう」と言ってひこ星は光になって星空にとけてゆく。
 空を見上げれば満天の星空。漆黒のキャンバスに無数の白い光。

■マップ

 ★---[A草30km]---○---[B草30km]---○---[C丘35km]---☆
A草:草原+暑い
B草:草原+雨+霧
C丘:丘陵+曇り
★:スタート地点
☆:ユールーナ(目的地)

■マスタリングの補助となる設定やデータ、ガイダンス

●ユールーナ

 本シナリオでは登場しないのだが、背景・PCのモチベーションとして意味をもつので紹介する。

街の名前:”月明かりの都”ユールーナ
街の規模:大都市(30000人程度)
支配体制:
地勢と気候:
代表的な建物:
特産品:
街の色・匂い・音:
街を脅かすもの:
その他:人間とコネコゴブリンが仲良く暮らす都。西の果てにある。

 予め「街づくり」をしておくことで、NPCが街の様子などを伝えられるかも知れない。
 「街づくり」においては、大雑把な設定が書けたら、PCとしてその街にどう関わっていくかを考えるように誘導する。
例えば「ミンストレルの~~さんは、ユールーナで何がやりたいですか?」だとか「村出身のあなたにとって大都市は初めてですか? だとしたら、どんな事に期待を持っていて、どんな事が不安ですか?」といった具合に質問し、各項目を具体的に埋めていく。
 「街づくり」はセッション開始前か、ユールーナの情報が出たときに行うことを想定している。

●登場NPC

 サラディ:20代女性。褐色のミンストレルで、踊り子。楽器はタンバリン。陽気で気さくだが根は頑固。「かわいい」物が好き。
 ビーゴ:30代男性。髭を蓄えた金髪のクラフトで、武器職人。言葉数少ないが気遣いのできる巨漢。
 クロ:マーチャントで、コネコゴブリンの雄。そろばんは魚の骨製。理知的だがお喋り好きでお節介が過ぎる。
 ひこ星:人間のようだが、実は星。遠く離れた国に恋人がいる。

●旅人との交流

 サラディたちはユールーナの側から東に向かって旅をしている。
 PCたちがNPCからユールーナの情報を得ようとする場合、「街づくり」のデータをNPCの口調で読み上げればよい。
 また、「ユールーナにどんな用事があるんだい?」とサラディは尋ねるかもしれない。
 プレイヤーは突然の質問に戸惑うかも知れないが、街づくりの時の発言を思い出しながら、「旅に出た理由」や「クラス」、パーティの仲間などに触れながら、GMとして、サラディに対して答えが言えるようにサポートしよう。
 サラディたちがユールーナを訪れた目的は「街づくり」の中から適切なものを選ぶとよい。例えば「特産品を調達しに来た」などである。
 PCたちはサラディたちと意気投合するかも知れないし、逆に「お友達になれない」と思うかも知れない。
○会話を弾ませるテクニック

  • 竜人はスロットorLPを消費して〈狩猟〉チェックに【フォーチュン】を使用する。

  これは〔おいしい食料〕を彼らに分け与えるロールプレイを誘発するためである。

  • PCの装備している〔中古の〕旅装が「実はかつてNPCが使っていたものだった」ことにする。

  アイテムを切っ掛けにして、当該旅装が活躍する地形を旅した話などを語りながら話題をつくることができる。

  • あるPCから聞いた話をうけて、別のPCに同じ話題を振る。

  PC対NPCで会話が閉じないようにする。PCどうしに話を広げていく。
○会話を終わらせるテクニック

  • どの程度「交流」すべきかの基準を考えておく。

  例えば、旅日誌に特定のPC・NPCの印象が一行程度書けるぐらいの交流で十分だろう。

  • 「夜が更けてきた、そろそろ瞼も重くなってきたようです」とナレーションを入れる。

  会話を打ち切るロールプレイを誘発するためである。

●星降る丘

サラディ「ユールーナの東の丘は『星降る丘』と呼ばれていて、夏になると満天の星空を見ることができるんだ。ここからだと、あと2日ぐらい歩かないといけないかな。その日は晴れるといいね。」
〈伝承知識〉8:世界で最も最後に夜が訪れる丘。全ての星が集まる星の終着駅で、満天の星空が拝める。
〈伝承知識〉10:文字通り、丘に星が降ってきたという伝承がある。丘のあちこちに流星岩があり、移動チェックに失敗すると大ケガを受けることになる。
〈教養知識〉10:星降る丘にたまに流星が落ちることがあるが、流星の岩は適度に穴が空いていて、体を洗う軽石としてうってつけである。

●動物の痕跡(モブ・ビースト)

ビーゴは旅先での危険について尋ねられると、有益な情報をもたらしてくれる。仲良くなれば尋ねなくても教えてくれる。
ビーゴ「この草原にゃ、モブ・ビーストが生息している。奴らは春が「旬」だし、そんなに数は多くないが、注意するといい。」
ビーゴ「ああ、そうだ。材料加工で採れる奴らの「牙」は50Gほどで売れるから、腕に自信があるなら挑んでみてもいいだろうさ。」
〈伝承知識〉8:かつて数万匹のモブ・ビーストが1つの群れを作り、国1つを丸ごと滅ぼしたという。
〈教養知識〉10:【体力】や【敏捷】は弱い人間程度しかなく、【知力】や【精神】は人間以下とされる。
〈動物探し〉地形:付近を縄張りにしており、襲われるなら野営後、食事を摂っているタイミングで襲われるだろう。

●彼女へのプレゼント表(1d4)

1:かわいい石鹸
2:ひかる手鏡
3:高品質の香水
4:魔法瓶

●ひこ星の報酬表(1d6)

1:ひかる風よけマント
2:ひかる背負い袋
3:ひかる食器
4:ひかる火起こしセット
5:ひかるぬいぐるみ
6:ひかる保存食

*1:コネコゴブリンなのに語尾に「ゴブニャ」がつかないのは何故か。本当はコネコゴブリンではないからです。

*2:以前に降ってきた星である

アリアンロッド2E』の役割論

役割とは?

 戦闘*1においてPCを機能として見なすことがあります。パーティ(ギルド)を1つの“まとまり”として捉えて、その“まとまり”の中で果たしている機能を役割といいます。
 実際にセッションに参加してみると、他のプレイヤーが、ルールブックには書いていない言葉でPCの性能について説明する場面に出くわすことがあると思います*2
 『アリアンロッド2E』ではメインクラスによってパーティ(ギルド)内のPCのおおよその役割が決まります。しかし、同じウォーリアでも、その役割はキャラクターごとに異なります*3。『スキルガイド』P18参照。

役割の重要性

 冒険者たちは危険いっぱいのダンジョンに潜入し、戦闘をします。PCはギルドの仲間に背中を預け、協力して危機を乗り越えなければなりませんので、仲間として自分に求められる役割はしっかり果たさなければなりません。老人であっても、幼女であっても、キャラクターの性格や設定は別として、結果的に役割を果たしていけるようなプレイングをしなければなりません*4

ウォーリア

●基本的な役割
(A) 敵に近づいて白兵攻撃(近接攻撃)する。
(B) 敵を足止めするか、《カバーリング》を使って後衛の味方を守る。
●そのために大事なこと
【筋力】強い武器を装備する、固い防具を装備する、HP、移動力
【器用】攻撃を確実に命中させる
【行動値】(敏捷+感知)敵よりも先に動いて敵を足止めする*5
[武器]どの種別の武器を持つか*6考え、攻撃力と価格・各種修正の兼ね合いを考えます。
[防具](盾)、頭部、胴部、装身具は防御力が高い物を選びます。
●取得すべきスキル
CL1《アームズマスタリー》
CL1~2《カバーリング
CL1~3《カバームーブ》1
CL3~5《ボルテクスアタック》
この他《バッシュ》などダメージを上昇させるスキル
●考えなければいけないこと
移動力:敵に近づくため、位置取りが重要
所持金:防具にお金がかかるため、遣り繰りに苦労する
所持品:【筋力基本値】が高いため、アイテム管理を任されやすい
ダメージ:ダメージ(『R1』P247~)計算をする場面が最も多いのがウォーリア
筋力関係:跳躍(『R1』P269)と登攀(『R1』P270)を確認する
器用関係:シーフ次第で、トラップ解除(『R1』P268)をするかも知れない

アコライト

●基本的な役割
(A) ダメージロールの直前に味方に《プロテクション》を使う。
(B) ダメージを受けた味方に《ヒール》を使う。
(C) 第二のウォーリア(ダメージを受ける)としての役割。
ただし(C)については限定的な場面でのみ求められる役割。
●そのために大事なこと
【精神】MP、魔法防御
[防具](盾)、頭部、胴部、装身具は防御力が高い物を選びます。
●取得すべきスキル
CL1《プロテクション》1~2、《ヒール》、《ファーストエイド》
CL2~3《クイックヒール》
CL2~4《アフェクション》
CL4~6《プロテクション》5
この他、回復が必要ない時に使用する攻撃スキルか支援スキルを取得する。
●考えなければいけないこと
MP:アコライトのMP切れはパーティの死に直結する。野菜やMPポーションは多めに
距離:味方に支援が届くよう《プロテクション》や《ヒール》の射程(20m)を意識する
味方のダメージ:味方の最大HP、現在HP、防御力、敵のダメージ量をチェックする
精神関係:神の使徒のイメージもあり、交渉(『R1』P271)を任されやすい

メイジ

●基本的な役割
(A) 敵にダメージを与える。
●そのために大事なこと
【知力】攻撃を確実に命中させる
【精神】MP
[スキル]ダメージを増やす
●取得すべきスキル
CL1《コンセントレイション》*7
CL3~5《リゼントメント》
この他、攻撃魔術系スキル*8をCL1で取得し、称号系スキル*9と《マジシャンズマイト》をレベルアップごとにSLを成長させていくことになります。《マジックブラスト》も強力なのでお薦めです。
●考えなければいけないこと
MP:MPが切れると何もできなくなるので、野菜やMPポーションの残量を確認する
距離:攻撃魔術の射程(ほとんどの場合は20m)を意識する
攻撃対象:厄介な敵、弱っている敵など、誰を次の標的にするかを常に考える
知力関係:アイテム鑑定(『R1』P272)や、知識判定が要求されたときはメイジの出番
感知関係:シーフが感知が不得手な場合、トラップ探知や危険感知を担当することもある

シーフ

●基本的な役割
(A) 《ワイドアタック》による武器攻撃で複数の雑魚を露払いする。*10
(B) 攻撃力の高い武器攻撃でウォーリアと共に敵のHPを削る。*11
(C) 高い回避能力を活かし、敵を惹き付けるなどして、攻撃を失敗させる。*12
上記(A)~(C)のうち、2つ以上の役割を果たすシーフを標準的なシーフと考えます。
●そのために大事なこと
【器用】確実に攻撃を命中させる
【敏捷】回避が成功しやすくなる、行動値が上がる
【移動力】敵を惹き付けるために敵のエンゲージに入るだけの移動力が必要です。
[防具](盾)、頭部、胴部、装身具は回避修正が下がらないものを選びます。
●取得すべきスキル
CL1《アームズマスタリー》、《ワイドアタック*》
CL1~2《バタフライダンス*》
CL2~3《インタラプト》
*印は必ずしも取得しなくてもよいスキルです。ただし極めて強力なスキルです。
●考えなければいけないこと
移動:敵を惹き付けるよう《ランナップ》などで敵に迫る
回避:攻撃を避ける場合《ドッジムーブ》などが有効
バッドステータス:逆上など、バッドステータスの効果と特色を知り、効果的に使う方法を研究する*13、『R1』P257や『SG2』P10に付箋をつけておく
トラップ:トラップ探知・解除及び危険感知の役割が期待される*14
器用関係:トラップ解除
感知関係:危険感知、トラップ探知、情報収集、ほか

*1:厳密には情報収集やダンジョン探索を含めた問題解決場面(いわゆる遭遇)全般にいえることなのですが、分かりやすさのため、ここでは「戦闘」としておきます。

*2:ウォーリアなら単体火力、壁役。アコライトなら回復役、支援役。メイジなら魔法火力。シーフなら露払い。といった具合に性能を表現する言葉があります。全国共通というわけではありませんが、それなりに意味が通るはずです。

*3:一般的にウォーリアは巨大な武器を持ち、単体への攻撃力に優れつつ、堅牢な鎧を装備できるので防御力も高いのですが、「攻撃寄り」なのか「防御寄り」なのかはキャラクターごとに異なるわけです。

*4:敵を攻撃しなければならない役割の人が「臆病」という設定だとします。いくら「臆病」でも敵を攻撃しないと困ります。なので「うちのPCは臆病な設定があるので戦闘中に勇気づけてもらえると助かります」と事前に打ち合わせをしておくとか、「戦闘中になると性格が変わる」とか「大事な場面では何者かに人格が支配される」とか、臆病だけど敵をちゃんと攻撃できる理由を考えておかないと他の人に迷惑がかかります。

*5:ウォーリアは武器等の影響で行動値が下がりやすいので、無理そうなら、最初のラウンドは《カバーリング》で後衛の味方を守ることを考えるとよいと思います。

*6:サムライならスキルで刀を取得でき、モンクが得意な「種別:格闘」の武器は安価なため、防具を買うのにお金が回せます。

*7:エアリアルスラッシュ》や《ライトシュート》、《ダークネスシュート》等があれば取得しなくてもよいでしょう。

*8:攻撃魔術系スキルとは「タイミング:メジャーアクション」で魔法攻撃を行なうスキルを指します。具体的には《アースバレット》《ウォータースピア》《エアリアルスラッシュ》《ファイアボルト》《アンデッドベイン》《ホーリーライト》《サモン・カトブレパス》《サモン・ファーヴニル》《サモン・フェンリル》《サモン・ヨルムンガンド》《サモン・リヴァイアサン》《ビーストベイン》などを指します。

*9:称号系スキルとは特定の攻撃魔術系スキルによるダメージを増やすスキルを指します。具体的には《アースブレイカー》《ウォーターマスター》《エアリアルセイバー》《ファイアロード》《ビリーブ》《フォースブリンガー》などを指します。

*10:[スリップ]や[威圧]などで足止めをすることで、似たような役割を果たせる場合があります。

*11:[毒]や[衰弱]などでダメージを加算していくことで、似たような役割を果たせる場合があります。

*12:[逆上]や[放心]などは敵の攻撃を失敗させるバッドステータスとして有効ですし、レンジャーやガンスリンガーなどは回避能力は低くても、回数制限のある撃ち落とし系スキルを使うことで攻撃を失敗させる役割を果たせます。

*13:例えば[放心]や[ノックバック]を与える場合は行動値が高くないと殆ど意味をなさないし、逆に[毒]は行動値が遅い方が活かせる場面が多いなど、バッドステータスごとに戦術上の特徴が違うのです。

*14:なお、トラップが発動してしまった場合、解除担当が被害を受ける場合が多いのですが、問答無用系でなければ、トラップによる攻撃を回避できます。その場合、回避判定、【敏捷】判定、【幸運】判定が要求されることが多いようです。

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アリアンロッド2E』の戦術論

 こういうものは「やっていくうちに気づく」もので、教わるものではないとは思っているのですが、必要としている人向けに書くことにします。

■役割論

 『アリアンロッドRPG 2E』(以下AR2E)では、4つのメインクラスが設定されています。この4つのメインクラスを「役割」という切り口で理解するのが、戦術のはじめの一歩になります。

役割とは何か

 『R1』P88を開いてください。渋沢佳奈先生の描いた凛々しいウォーリアのイラストがありますね。このページにはウォーリアの説明が書いてあります。この一段落目「ウォーリアとは本来、未開の~~~呼ばれることがある」までがウォーリアの設定です。一方で二段落目の「ウォーリアは主に前衛~~~徹する者もいる」までがウォーリアの役割です。
 残念ながら、全てのクラスの説明がウォーリアのように設定と役割の両方が書かれているわけではないのですが、ウォーリアの説明を読んでもらえれば、設定と役割の違いが理解できると思います。*1
 話を簡単にすると、あなたが戦闘で求められているものが役割です。TRPGはどんなキャラクターを作っても自由とは言いますが、一緒に冒険に出かける仲間がいる以上、その仲間を危険に曝したり、迷惑を掛けたりはしたくないものです。そして何より、仲間のピンチを救ったり、仲間の役に立ったりすれば格好いいですよね。
そういうわけで、PCには弱点と長所があった方が「互いが互いを助ける」いい雰囲気の仲間になれて、ロールプレイも活発になるので、キャラクター作成のルールの中に「弱点と長所を作りなさい」というルールを埋め込んだものがクラスシステムというわけです。ウォーリアにはウォーリアの役割、アコライトにはアコライトの役割があるのです。言い換えればウォーリアにはウォーリアの弱点と長所があり、アコライトにはアコライトの弱点と長所があるのです。クラスは「弱点」「長所」「設定」のセット販売みたいなもので、これらが絡み合うお陰で、誰でも気軽に「仲間どうしの絆が深まるような冒険」を体験できるのです。

メインクラスの役割

 AR2Eはスキル構成によってPCの戦い方が変わるゲームなので、画一的な役割論は通じないのですが、8種類の上級クラスを念頭に置いたイメージなら伝えられます。ウォーリアは対ボス用の攻撃と、味方の防衛。アコライトは回復と支援。メイジは強力な魔法攻撃。シーフは範囲攻撃と回避能力。ここから、もう少し具体的に各メインクラスについて説明していきます。

ウォーリア

 ウォーリアは「脳筋で分かりやすいから初心者向け」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、それは誤りです。
 『R1』P158、159を見て下さい。冒険者が装備できる防具が並んでいます。注目して欲しいのは「クラス制限」の項目です。「ウォーリア」の文字が数多く並んでいますよね。そう、つまりウォーリアは装備できる防具の種類が多いということです。これだけ多くのデータから自分にぴったりのものを選ばないといけないし、武器も使うわけだから、装備品の更新頻度も多く、意外と考えることが多いのです。
 また重たい武器や防具を装備するために【筋力基本値】を高くする必要がでてくるのですが、そうすると必然的に「所持可能重量」も増えます。たくさん荷物が持てるようになるので、ギルド内で荷物持ち係に任命されることも多くなります。それは、アイテム管理を任されるということで、案外ウォーリアは処理しなければならないデータが多いのです。
 また【筋力】が高いことから、登攀跳躍(『R1』P269、270)で活躍することも期待されます。「冒険者セット」に含まれている「ロープ」を持参し、できれば一般スキルの《アスレチック》を取得しておくとよいでしょう。
 防御力の高い防具が装備でき、またHP上昇率も高いウォーリアは、純粋に「倒れにくい」という特徴をもっています。そうすると、打たれ弱い味方を守るために、積極的に敵がいる前の方に出ていって敵を少しでも足止めする役割が期待されます。自分がやられたくないからと言って逃げていてはいけません。あなたがやらなければ、仲間はピンチになります。
●基本型:ウォーロード型(撃破役/単体火力/ストライカー)
 近接武器を装備し、前に出てボスに大ダメージを与える役割を担います。
 強い敵に戦いを挑み、自分がダメージを受けながらも相手に大ダメージを与えたい人に向いています。
 あなたの役割は「敵の至近攻撃を受ける」ことと「敵に大ダメージを与える」ことなので、あなたが標的にすべきエネミーは脳筋のデカブツです。ダメージの大きな近接武器を使ってくる、ボス、あるいは中ボス級のエネミーに挑戦を仕掛け、味方のいる後衛に突破されにくいように位置取ります。また弓や銃を持った射撃タイプのエネミーよりは、馬に乗っているような移動力が高そうなエネミーを止めた方が有効です。飛行状態のエネミーは足止めできないので注意してください。適切なエネミーがいない場合は手近なエネミーを狙うとよいでしょう。
 ダメージを確実に与えることが求められるので、《アームズマスタリー》は必須です。《バッシュ》も強力なのでお薦めです。
●基本型:ナイト型(防衛役/カバーキャラ/ディフェンダー
 前に出て敵の足止めをしつつ、味方に攻撃が及ばないように守備を固める。
 とにかく敵からたくさんの攻撃を受け、自分を犠牲にしてでも味方を守り抜きたい人に向いています。
 ナイト型のウォーリアの動きは戦場の地形やエネミーの構成に依存する(戦術性が高い)ので、役割論で片付けるのは難しいです。基本的にはウォーロード型と同様にダメージもきちんと与えられるようにしておいて、前衛に出る形になります。ナイト型は味方のアコライト(パラディン型)やシーフ(近接武器)と同じエンゲージに突入し、彼らがダメージを受けそうになったら《カバーリング》を宣言して守護する戦法をとります。ワントップで突出するウォーロード型と違って、ナイト型は他の前衛と歩調を合わせる(連携する)ことが重要になります。
 CL1の時点で《カバーリング》は必須です。また距離が離れていても味方を守ることができる《カバームーブ》も早いうちに取得しておきたいところです。また片手武器ならば盾を装備しておくべきだし、両手武器なら《ウェポンガード》がお薦めです(サムライなら《トゥルーアイ》もあります)。
●特殊型
 射撃ウォーリアや、攻撃しない(防御と支援のみの)ウォーリアを作成する場合、他のプレイヤーと相談した方がよいでしょう。

アコライト

 アコライトは割り込み処理が多く、味方の能力や状態を把握していないといけないので、初心者向けではありません。ただし、求められるスキルが確定しているので、低レベル帯における成長はほとんど悩む心配はありません(逆に自由が少ないせいで敬遠されることもありますが)。
 アコライトは支援に特化できるメインクラスです。コンストラクションでは初期取得になっている《プロテクション》というスキルを使って味方を守ります。アコライトを担当することになったら、《プロテクション》《ヒール》はCL1の段階で必ず取得しましょう。そしてCL4~6までには《プロテクション》を最大のSL5まで育てるようにしましょう。
AR2Eは戦闘終了後にHPが回復しないシステムなので、ダメージコントロール系のスキルは必要とされます。シナリオ中に何度も使用できる《ヒール》や、あらゆるダメージ種別に対して万能に対応でき、ダメージが決定してから割り込みで唱えられる《プロテクション》は文句なしに超強力な支援魔法です。
 またアコライト、特に支援型のアコライトは、戦闘において判定の達成値が必要な場面が少ないので、MP上昇に繋がる【精神基本値】を高くする傾向があります。そういうわけで、【精神】が高いアコライトは交渉役を任される場面も少なくありません。
 一般スキルの選択ですが、アコライトはコンストラクションで初期取得となっている《ファーストエイド》や、手番が余った時にエネミー識別を行なうための《モンスターロア》がお薦めです。あるいは高い【精神】を活かすために《オピニオン》《ブラフ》《インサイト》《ベアアップ》などを取得するのも手です。
●基本型:プリースト型(回復役/支援役/ヒーラー)
 《プロテクション》《ヒール》を中心とした支援に加え、様々な支援を担います。
 味方の能力や現在受けているダメージ状況を把握しながら、味方を支援したい人に向いています。
 基本的には後衛に位置取りますが、前衛の味方(ウォーリアやシーフ)が《ヒール》や《プロテクション》の届く距離から逸脱しないように先を読んで距離を保つ位置取りが求められます。例えばアコライトのあなたが、前衛のウォーリアと20m離れているとき、さらにその先にウォーリアの標的となりうる目標がマップ上に配置されているならば、恐らくウォーリアは次のメインプロセスで《プロテクション》の圏外に出てしまうでしょう。そうなる前にアコライトであるあなたは、支援が届く位置まで前進すべきなのです。
●基本型:パラディン型(指揮役/攻撃+支援役/殴りアコ)
 《プロテクション》《ヒール》は使えるものの、攻撃に参加します。
 味方を支援しつつも、武器で、ダメージを与えたいプレイヤーに向いています。敵や味方の現在のダメージ状況を把握しなければならず、立ち回りが忙しくなります。
 敵に至近攻撃をしながらも、味方を支援する必要がありますので、前衛もしくは中衛に位置取ります。具体的には味方にかける《ヒール》や《プロテクション》が届く距離を保ちながら効果的に敵を攻撃したり後衛の味方に敵が寄ってくるのを防いだりする位置取りが求められます。
●特殊型
 《プロテクション》や《ヒール》を取得しないアコライトを作成する場合、他のプレイヤーと相談した方がよいでしょう。

メイジ

 メイジは装備できる防具の種類が少なく、HPも低いため、とても弱い存在です。また武器攻撃をすることもないため、装備品を買う機会が少ないのが特徴です。はじめのうちは、スタッフ(『R1』P155)やマジックスタッフ(『R1』P166)、あるいは赤き斜陽の剣(『R2』P90)あたりを装備することになるでしょう。
 メイジの役割は火力です。AR2Eのエネミーはほとんどが魔法に弱いため、魔法攻撃ができるメイジは極めて強力です。味方に守ってもらいながら、とにかくたくさんダメージを与えて、少しでも早く敵を戦闘不能に追いやることを考えてください。
 メイジにとっては装備品よりもスキルが大事です。自分が攻撃の手段としてメインで使う予定の魔法を1つ選んで、それを育てていきます。
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 基本的な押さえとしては、攻撃魔術系スキル(メインの魔法)を1つだけ選びます。そうすると、それに対応した称号系スキルが自ずと決まるので、後は成長に合わせて称号系スキルと魔術拡張スキルを取得していくという流れになります。
低レベル帯の成長時には、称号系スキルを1レベル上昇させ、《マジシャンズマイト》も1レベル上昇させ、魔術拡張スキルから好みのものを1つ取得します。
プレイヤーの好みで《マジシャンズマイト》もしくは魔術拡張スキルを取得する代わりに、その他のスキルを取得するという選択もアリでしょう。メイジならば《フライト》がお薦めです。またセージを選んでいるならば《エンサイクロペディア》は役に立ちます。他にもサポートクラス特有の強力なスキルもありますので、探してみてください。
メイジは魔術判定に使用する【知力】が高いという特徴を持っていることから、アイテム鑑定、その他の知識判定での活躍が期待されます。一般スキルには特定の知力判定を強化するスキルも数多くあるので、それらを選択するもの面白いです。知識判定により特化したいのであればサポートクラスとしてセージを選ぶとよいでしょう。そうした場合、エネミー識別をする機会に恵まれるので一般スキルの《モンスターロア》を取得するのがお薦めです。そうでなければ知力判定強化系スキルか、シーフの役割を補う意味で《サーチリスク》などを取得するのも手です。
メイジは魔法が届く「敵から20m以内」の距離を保ちつつ、なるべく敵の攻撃を受けないように後衛に陣取るのが基本的な動きになります。敵の範囲攻撃を受けないように味方が固まっているエンゲージから離れることも大切です。後は、どのエネミーを攻撃対象にするかを常に考えながら戦況を見ておくとよいでしょう。
●基本型:ウィザード型(キャスター)
 メイジの精霊魔法を使って戦うのがウィザード型です。サポートクラスはメイジもしくは、セージを選んでおくのが一般的です。
●基本型:ソーサラー型(キャスター)
 精霊魔法以外のアコライト、サモナー、ニンジャなどをメインに据えるメイジがソーサラー型です。それぞれのサポートクラスの特徴を踏まえておくと幅が広がります。
●特殊型
 《エンチャントウェポン》などを主体とする支援型メイジという選択肢もあります。支援型メイジを作成する場合、他のプレイヤーと相談した方がよいでしょう。
また、魔法剣士のような、武器で攻撃しつつ魔法を使うようなキャラクターを作成するのは、AR2Eでは(とりわけ低レベル帯では)ほぼ不可能と言われています。勿論、作成すること自体は可能ですが、役割から完全に逸脱した「弱いキャラクター」にしかなりません。ウォーリアやシーフで魔法ダメージを与える武器を装備するか、魔法ダメージ化するスキルを使用するのが最も近い再現方法でしょう。状況に応じて武器攻撃と魔法攻撃を使い分けるようなキャラクターを演じたい場合、残念ながら、別のTRPGで遊んだ方がよいと思われます。

シーフ

 シーフは比較的「何をやっても許される」所があり、役割意識の低いスタンドプレイ型のゲーマーに好まれる傾向があります。とは言え、最低限、ダメージを与えつつ、副次的に攻撃を惹き付ける役割を担い、トラップ探知とトラップ解除を担当することが期待されます。
 シーフは武器攻撃をするという点ではウォーリアと同じですが、一般的にウォーリアより火力が低く、強力な防具も装備できません(防具に関してはアコライトより薄っぺらいです)。しかし、《ワイドアタック》という便利な範囲攻撃スキルが取得でき、《バタフライダンス》や《ドッジムーブ》など、強力な回避系スキルが取得できるのが特徴です。
避ける削る翻弄する、の3つがシーフの基本的な動きです。「避ける」は敵の攻撃を惹き付けて回避すること、「削る」は相手のHPをある程度減らすこと、「翻弄する」は移動やバッドステータスによって嫌らしい場所に位置取って敵の動きを封じたり、敵の攻撃を失敗しやすくさせたりすることを指します。シーフはこれら3つの役割を、自分の好きなバランスで担っていくことになります。
シーフは武器攻撃を行なうため【器用】が高く、回避のため【敏捷】も高くなりがちです。大業物を振るうシーフは【筋力】を、MP消費の多いシーフは【精神】を高めることになるのですが、そうでないシーフは、他のメインクラスが手薄になりがちな【感知】を育てていくというのが基本パターンです。【感知】は戦闘で役に立つことはほとんどありませんが、トラップ探知、危険感知、情報収集で必要な能力値なので、戦闘以外でも役に立ちます。
一般的にシーフは【感知】が高いことが期待されます。つまり気づくという第4の役割も期待されることになります。トラップ探知、危険感知、情報収集はそれぞれ《ファインドトラップ》、《サーチリスク》、《リサーチ》の一般スキルと対応しています。また【器用】も高いことからトラップ解除を担当することも期待されます。一般スキルとしては《リムーブトラップ》です(アイテムの小型ハンマーとくさびも持っておくとよいでしょう)。ただしダンサーのように【器用】や【感知】が弱いシーフの場合など、第4の役割を担うのは難しい場合があるので、「できればやる」ぐらいの気持ちで臨む方が気は楽でしょう。
エクスプローラー型(コントローラー/トリックスター
 近接攻撃でエネミーのHPを削り、バッドステータスを与えつつエネミーを翻弄する役割です。短剣、鞭や各サポートクラスの近接武器で戦います。
 どうすれば敵を困らせることができるかという事について考えるのが好きなプレイヤーに向きます。
 《バタフライダンス》《ドッジムーブ》で更に回避能力を向上させるとともに、高い回避能力を活かすため《タウント》などの[逆上]のバッドステータスを与えるスキルを併用すると効果的です。また、適切な場所に位置取りできるように《ランナップ》を取得するのも手です。
●スカウト型(シューター)
 弓、錬金銃、魔導銃などの射撃攻撃をするシーフです。スカウト型にとっての回避は、エネミーの中に射撃攻撃や魔法攻撃をしてくる相手がいた時のための保険です。ウォーリアの《カバーリング》やアコライトの《プロテクション》をメイジのために使わせるために、自分はダメージを受けないように心得ておくというわけです。ゆえに、エクスプローラー型ほどの回避能力は求められません。またスカウト型は位置取りによって「翻弄する」役割も期待されません。それよりも、メイジと同様に敵にたくさんダメージを与えることの方が重要です。各サポートクラスのスキルを把握しておくことが大切です。

マスタリー系スキル

 支援型アコライトを除き、攻撃に参加するキャラクターにとって命中判定は重要です。《アームズマスタリー》もしくは《コンセントレイション》は命中判定を+1Dするスキルです。平均値をとってみると、命中判定の達成値を+3.5し、クリティカル率を上げ、ファンブル率を下げる効果をもっており、しかもパッシブなので、極めて強力です。
 もしあなたがまだ、マスタリー系のスキルを取得していないのなら「勿体ない!」と言われるでしょう。

必殺技系スキル

 神業系、四種の神器、シナリオ1回のやつ、各メインクラスの強いやつなど、様々な呼ばれ方をしますが、ここでは「必殺技系」と呼ぶことにします。

  • ボルテクスアタック》(ウォーリア)
  • 《リゼントメント》(メイジ)
  • 《アフェクション》(アコライト)
  • 《インタラプト》(シーフ)

 これらのスキルは「このスキルはメインクラスが○○○、およびその上級クラスでなければ使用できない」と書かれているスキルです。しかも「1シナリオに1回使用可能」という制限があるので、メイクラスごとに設定されている必殺技のようなものです。これらのスキルを使用するということは、そのキャラクターの見せ場でもあるのです。
 ただし、使用回数に制限のあるスキルばかり取得してしまうと、基礎力が落ちてしまいますので、バランスが大事です。これらのスキルはCL3~4前後で取得するのがよいと思います。
 特にウォーリアとメイジは攻撃系、アコライトとシーフは防御系の必殺技です。ウォーリアの場合は《スラッシュブロウ》、メイジの場合は《マジックフォージ》という1シーン1回使用できる準必殺技のようなスキルも存在します。

タイミングは被らないようにする

 あくまで原則ですが、「セットアッププロセス」「ムーブアクション」「マイナーアクション」「メジャーアクション」など、同一のタイミングのスキルを複数取得しても無駄になることが多いので、基本的にはお薦めしません。例えば「状況に応じて○○と××を使い分ける」みたいなスキル構成にしてしまうと、器用貧乏になってしまい、役割が弱くなってしまいます。特にメジャーアクションのスキルは一本化することをお薦めします。多くの種類のスキルを取得するよりも、特定のスキルのSLを上昇させたり、「タイミング:パッシブ」のスキルを取っていったりする方が総合的に強くなります。

■役割のプレイ

 AR2Eの戦闘時、プレイヤーは基本的には役割のフレームワークで思考します。つまりキャラクター作成時のコンセプト通りにPCを動かそうとするのです。このとき大切なのは味方に自分の役割を伝えることです。「私は~~するつもりでいます」「私は~~を全力で攻撃するつもりです」といった具合に予告をします。それを聞いた他のプレイヤーは自分のPCの役割でものを考えるので「よし、わかった、頼むぜ」とか「ちょっと待ってください。そっちへは私が行くので、その横の敵をお願いします」のように相談が活発になります。
AR2Eでは、往々にして、味方の役割と被ってしまったり、状況がそれを許さなかったりする場合もあります。ですからこのように、「自分の役割を予告する」という形で相談を持ちかけるのがスマートです。

■戦術論

そして、役割論だけでは何とかならない場合に出てくるのが戦術のフレームワークです。各PCが本来の役割から脱却して、勝つために本当にしなければならない事を自覚してゆく過程が戦術です。戦術のフレームワークでは、PCたちが持っているスキルやアイテム、およびHPやMPなどのデータをパラメータのレベルにまで分解して、今まで出そろった情報を元に、これから先の戦況がどのように変化するかについて冷静に分析をし、最適な問題解決案を提案し、意思決定します。
リソースを使い果たしたメイジが継戦可能なウォーリアを[カバー]する場面、魔法の箱に閉じこめられたシーフを救い出すためにアコライトが苦手な[トラップ解除]に挑戦する場面、手番が余ってしまったウォーリアが少ない知識から絞り出して[エネミー識別]をする場面。こうした「いつものAR2E」が崩壊させられる場面というのは、セッションにスパイスを与え、ゲームをエキサイティングなものにします(思考時間を長くし、プレイヤーに疲労感を与えますが)。
役割のフレームワークの段階では、予め想定しておいたキャライメージに合致するロールプレイが有効で、キャラクターどうしの掛け合いもやりやすかったのに対し、戦術のフレームワークでは「敵に勝つ」「生き残る」といった極限の目標を目の前にしてキャライメージを伴った役割性が一旦、崩壊します。その上で、その場限りの「役割」が再構築され、新しいキャラどうしの関係や、新しいキャライメージも再構築されます。このように戦術に引っ張られてドラマが生まれ、キャラクターが成長してゆくのもTRPGの楽しみの1つです。

役割と戦術のバランス

 役割を重視し、「PCたちがピンチになった時のみ戦術のフレームワークに切り替える」というスタンスでプレイするプレイヤーを役割重視と呼ぶことにします。役割重視でプレイすると、キャラクターのイメージが伝わりやすく、ロールプレイが円滑になり、セッション時間も短くなるというメリットがあります。
 一方で戦術を重視し、「効率よく戦闘を進めるために常に最適な戦術を考える」というスタンスでプレイするプレイヤーを戦術重視と呼ぶことにします。戦術重視でプレイすると、キャラクターのイメージに変化がつけられ、多様性に富んだセッションになり、困難な状況に対しても柔軟に対処できるというメリットがあります。
 役割重視は意固地になると、頭が堅く、人に役割を押しつけるようなプレイヤーになってしまいがちです。「あなたは○○だから、~~するものです」だとか「AR2Eは~~するゲームだから、こういうのはおかしい」といった言説を振りまきます。これでは自分が気づけなかった新しい発見をすることがなくなってしまいますし、戦術的状況に対応できず戦うことを投げ出してしまします。そのうえ相手に対して高圧的過ぎて友達をなくします。
 戦術重視も意固地になると、「もっと良い手があるのではないか」と考え込んでしまい、ゲームの進行を滞らせてしまったり、勝利条件を達成するのに不必要なまでの効率化を進めることで、他人の出番を奪ったり、キャライメージを無意味に壊すようなプレイングに走ったりします。これでは友達から呆れられ、自分が作ったキャラクターの良さを貶めることになってしまいます。

*1:尤も「物語上の役割」という考え方もありまして、その場合は設定≒役割ということもあるのですが、戦術論においてはほぼ無意味なので、横に置いておきます。

プレイヤーにとってのTRPGの価値(Ver.1.0)

この記事はTRPGを楽しむための思考の枠組みとして、あれこれ考えていることについてまとめたものです。思ったより長くなってしまったので、いくつかの記事に分割しています。この記事はポータル的な記事で、各記事へのリンクを貼ることにしました。
この記事は「理論」とか「議論」と言えるほど成熟したものにはなっていないですが、読者の皆さんの刺激になればいいなと思っています。

 TRPGとは何かを議論する上で、TRPGの価値について定義せねばならない。しかしTRPGの価値といった場合、「TRPGで遊ぶ人にとっての価値」であったり、「TRPGを商品として売る人にとっての価値」であったり、「TRPGについて議論する人にとっての価値」であったり、様々な視点があるので、ここでは「プレイヤーにとってのTRPGの価値」について話を進めることにする。つまりGMにとっての価値については言及しない。以後、本稿において「TRPGの価値」あるいは単に「価値」といった場合、プレイヤーにとっての価値を指し示す。
 ここでプレイヤーにとってのTRPGの価値を明らかにすることで、(1)GMがプレイヤーを満足させるために何に配慮しなければならないのかを理解する助けとし、(2)プレイヤーが自分の目指しているプレイングの方向性を自覚し、(3)TRPGとは何かという議論を発展させていく土台とすることを期待している。

価値六相(ヴァリュー・チャート)

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 TRPGの価値を構造的に把握するなら、6つの相によって捉えることができるだろう。すなわち、[攻略性][役割性][参加性][創造性][体験性][遊戯性]の6つである。これらは互いに関連しながら、全体としてTRPGの価値を形成している。

  攻略性 最適解形成を楽しむこと(決断と勝利)
  役割性 自己効能感を楽しむこと(機能と演技)
  参加性 体験の共有を楽しむこと(機会と仲間)
  創造性 唯一無二性を楽しむこと(偶然と独創)
  体験性 未知の体験を楽しむこと(興味と学習)
  遊戯性 行為の結果を楽しむこと(操作と影響)

 プレイヤーによって、6つの相のうち、どの相を重視しているかが異なるだろう。また同じプレイヤーでもその日の気分や、遊ぶシステム、集まったメンバー、シナリオなどによって、重視する相が変化することもある。
 よくトラブルの原因と考えられる、同じ卓に参加したプレイヤーの目的がバラバラである状態とは、各プレイヤーの重視する相の相違として説明できる。例えば「攻略性は重視するが参加性を軽視するプレイヤーA」と「参加性は重視するが攻略性を軽視するプレイヤーB」が同卓した場合、プレイヤーAはちゃんとルールを覚えてくれないプレイヤーBに憤りを覚えるし、プレイヤーBは、プレイヤーAに「キミは攻撃しないでくれ」という理由を自分が知らないルール用語で早口で説明されたせいで、セッションをつまらないと感じる。
 ここで、6つの相のうち、ほとんどの場合において特定の相に偏った嗜好を示すプレイヤーを[棲み分け型]と呼び、状況に応じて嗜好が変わるようなプレイヤーを[摺り合わせ型]と呼ぶことにする。[棲み分け型]のプレイヤーは卓募集やサークルメンバー募集の段階で、自分の嗜好とマッチしているかどうかを診断することが大切だし、[摺り合わせ型]のプレイヤーはセッション中に、このセッションがどの方向を向いているのかを診断しながら調整していくことが大切だ。なお、この分類は実務的な分類であり、この両者を厳密に区分けする基準を設けない。したがって、どちらともいえないプレイヤーも存在し得る。
 いずれにせよ、本稿は、トラブルを回避するため、自分の嗜好と卓の方向性を診断し、棲み分けや摺り合わせを行う際の枠組みを提供することを目的の1つとする。


価値六相が満たされる具体的場面の例

攻略性

  • 敵に勝つ
  • ギリギリの戦いを強いられる
  • 望ましいエンディングを迎える
  • 情報や資源が複雑で考えさせられる

役割性

  • 役に立つ
  • 各PCが個性を発揮する
  • 自分が他のPCに必要とされる
  • 各PCが重要な役割を担わされている

参加性

  • 宣言をする
  • ダイスを振る
  • 話されている内容が理解できる
  • 仲間とセッションの思い出を語る

創造性

  • 意外な結果になった
  • オリジナリティが出せた
  • 他と同じような結果にならなかった
  • そのメンバーでしか味わえない体験になった

体験性

  • 世界観を味わう
  • 臨場感ある演出に直面する
  • 新しいサプリメントを使う
  • 普段遊ばないメンバーと卓を囲む

遊戯性

  • PCは自由に行為宣言できる
  • 行為の結果として状況が変化した
  • シナリオやGMを出し抜くことができた
  • 他のプレイヤーをあっと驚かせるプレイができた

価値六相の位置関係

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 なぜヴァリュー・チャート(VC)を並列せずに、図のような六角形の配置にしたのかについて説明が必要だろう。
 VCの上半分を見て欲しい。[遊戯性][攻略性][役割性]の3つは、いわゆるゲーム性、あるいは問題解決に属する価値であり、一方で[体験性][創造性][参加性]の3つは、物語体験に属する価値であることが見て取れる。
 あるいは左下側に注目して[遊戯性][体験性][創造性]は好奇心や遊び心に属する価値であるのに対し、残る右上側の[攻略性][役割性][参加性]は部活のような真面目な価値に属する。
 また左上側に注目して[攻略性][遊戯性][体験性]の3つは、『マリオブラザーズ』のようなコンピュータゲームが得意とする分野であるのに対し、残る右下側の[役割性][参加性][創造性]は他のプレイヤーの存在を前提としたソーシャル要素を含む価値である。
 このように、距離の近い相を一纏めにすると、大雑把にTRPGの価値を分類することができる。「問題解決/お話作り」、「フリーダム/ストイック」「コンピュータ/ソーシャル」といったところだろうか。本稿の目的は自分の傾向や卓の向かっている雰囲気を診断するためのツールを提供することにあるわけだから、厳密性よりも使いやすさを重視する。よって、大雑把で構わないというのが私の立場である。